ロシアによるウクライナ侵攻をぎりぎりで回避させるため、フランス、ドイツなど欧州の首脳らは粘り強く外交交渉を続けている。プーチン露大統領は会談に応じる姿勢を見せながらも、一方では新たに軍艦6隻をウクライナ南部に面する黒海に向かわせるなど、硬軟両面で西側に揺さぶりをかけている。
フランスのマクロン大統領は7日にモスクワを訪れ、プーチン露大統領と5時間に及ぶ会談に臨んだ。会談後、フランス政府筋は「ロシアはウクライナ国境付近に新たな兵力を配備しないと約束した」と記者団に語ったと報じられた。するとクレムリンは翌日、その報道内容を「事実ではない」と否定した。
ロシアのペスコフ報道官はさらに、ウクライナ北部と国境を接するロシアの同盟国ベラルーシに配備している軍についても、フランス政府筋が、「ロシアは今月予定している演習が終わり次第、撤退させる」とした情報も「そのような事実はない」と否定。同報道官はプーチン氏が、いつロシア軍をベラルーシから撤退させるか、何ら確約していないと強調した。
続けてペスコフ報道官は、「フランスはEU(欧州連合)の主要国でNATO(北大西洋条約機構)加盟国だ。だが、欧州のリーダーではない」とし、露仏会談では何も解決できないとした。プーチン氏は米欧がNATOの拡大により、ロシアの安全保障上の懸念を無視していると不満をぶちまける一方、マクロン氏の緊張緩和に向けた安全保障を巡る提案には一定の理解を示し、対話の継続を確認した。
マクロン氏はその足でウクライナの首都キエフを訪問し、同国のゼレンスキー大統領と会談。ロイター通信によると、マクロン氏は「突破口は見いだせていないものの、危機を解決する手段はあるとの考えを示し、全ての関係者に冷静になるよう呼び掛けた」。
一方でプーチン氏は15日、モスクワでドイツのショルツ首相とも会談する。ロシアと経済的な結びつきが強いドイツが、ロシアに対し同盟国と足並みをそろえた厳しい対応をとるかが焦点となる。
そのショルツ氏は、7日には米ホワイトハウスでバイデン大統領と会談した。米CNNは、「ショルツ首相はウクライナ情勢での共同戦線をアピールしながらも、ロシアから天然ガスを供給されているパイプライン閉鎖を巡っては行き詰まりを露呈した」とし、ドイツが西側の団結に水を差す可能性を指摘した。
ノルド・ストリーム2は、ロシアの国営企業ガスプロムとドイツ、フランスなどの企業が出資する巨大パイプラインプロジェクトで、昨年9月に完成。現在はドイツ政府の承認待ちの状態となっている。米独首脳会談では、バイデン氏が「ロシアが侵攻した場合、ノルド・ストリーム2はなくなる。われわれが終止符を打つ」としたのに対し、ショルツ氏は明言を避けたのだ。