自然界のチンパンジーはケガをしたら、どう治療するのか?虫を捕獲し、それを直接傷口に塗るという驚きの行動が初めて観察された。さらに、自分だけではなく、仲間のためにも同様の行為をすることが分かった。英紙ガーディアンなどが8日伝えた。
アフリカ西部の国・ガボンのロアンゴ国立公園で、チンパンジーの群れ45頭の社会行動を調査しているドイツの研究者チームがまとめたもので、米科学誌「カレント・バイオロジー」で発表された。今回の発見は、「チンパンジーなどの動物が、無私無欲に仲間を助ける能力があるか」という科学的論争に一石を投じるものになりそうだ。
「オゾウガ・チンパンジー・プロジェクト」と名付けられた調査は、独オスナブリュック大の認知生物学者シモーネ・パイカ氏らが率いるチームによるもので、チンパンジー同士の関係や、いかに狩りをし、道具を使い、意思疎通をし、学習能力を発揮するのかを観察している。
その調査の最中、けがを負ったチンパンジーを治療する様子が2019年に撮られたビデオ映像で確認されたのだ。
調査チームのボランティア、アレッサンドラ・マスカロさんは、母親チンパンジー「スージー」が、足にけがをした息子「シーア」の手当をする様子を目撃。「母親が何かをくわえていて、それを手でシーアの足に塗り付けるようなしぐさに気づいた」と振り返り、「その夜、撮影した動画を検証してみると、スージーが何かを捕まえ、それをくわえ、シーアの足にできた2センチほどの傷口にあてがっていた」と報告した。
また、同チームの医学生ララ・サザーンさんは、オスの「フレディ」が同様の行動をしていることに注目。これらのチンパンジーが捕まえていたのは、空中を飛ぶ小さな昆虫だったことが分かった。
さらに衝撃的だったのは、すねに大きな傷を負った大人のオス「リトルグレー」の毛づくろいをしていた大人のメス「キャロル」が突然、飛んでいた昆虫を捕まえ、驚くことにそれをリトルグレーに手渡したことだったとサザーンさんは記録した。リトルグレーはその昆虫を傷口にあてがい、続いてキャロルと別の大人2頭が、交代で傷口を撫でたというのだ。
「その3頭とリトルグレーに血縁関係はないことから、彼らの行動は仲間への思いやりによる行為だったようだ」と記した。調査チームはマスカロさんが最初に目撃してから15か月間観察を続け、19頭が自分の傷のために昆虫をクスリとして使用し、3頭は仲間たちのために治療行為をしていたことを確認した。