2022-05-02 経済

「一つの中国」だから本土が台湾攻撃しても 「侵略」には当たらないと中国外務省が主張

© Photo Credit: Reuters / 達志影像

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中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官は先週の会見で、中国が将来、台湾を攻撃した場合、台湾は「中国の一部」だから「侵略」には当たらないと主張した。ロシアによるウクライナへの侵略との違いを強調し、〝国内問題〟として米国の台湾への軍事支援をけん制するための発言とみられる。

汪報道官の発言は前日、米国のブリンケン国防長官が米上院外交委員会で、台湾海峡における〝現状維持〟についての答弁に対する反論だ。ブリンケン氏は同委員会で、「数十年続く現状を破壊することになる中国による一方的な軍事行動を含め、(台湾が)外敵からの侵略に防衛できるよう、米国は必要な全ての手段を確保することに努める」とした。

米国は台湾の地位について表向きはあいまいな立場を取っているが、昨年行われた中国の習近平主席とのテレビ電話による首脳会談の後、バイデン米大統領は「台湾による自主的な判断にゆだねるべき」とし、台湾独立を支持するような発言をして注目された。一方、中国は台湾を分離した省とみなし、いずれは中国大陸に統一されるべきだと主張している。

ロシアによるウクライナ侵攻後の3月、両首脳は再び電話会談し、対ロシア支援への代償を示唆するバイデン氏に対し、習氏は米台接近をけん制した。バイデン氏は、同盟関係強化による対中包囲網を形成せず、「台湾独立を支持しない」と述べたとされ、習氏は「あなたの表明を非常に重くみている」とくぎを刺したと報じられた。

そうした経緯もあり、汪報道官は「一つの中国」政策が両国関係の基礎であるにもかかわらず、米国はそれを反故にしていると非難。そういった姿勢は台湾を〝危険水域〟に追い込み、米国にとっても〝耐え難い代償〟を支払うことになると警告した。

同報道官はまた、「台湾は中国の一部であるのに、どうすれば本土が台湾を〝侵略〟することになるのか」と語気を強めた。

ウクライナ侵攻の3日前、プーチン露大統領は国民に向けたビデオ演説で、ウクライナはロシアの〝歴史的領土〟であり、ウクライナ人は米国の後ろ盾を得たネオナチ政権の〝人質〟になっていると強弁。米誌ニューズウイークは、「この主張は中国の台湾に対する主張と重なり合う」と指摘した。

同誌は、「中国の指導者たちも長年、同種の論法で台湾併合を正当化してきた」と説明。「台湾の人々は〝台湾人〟であることに誇りを持ち、自由で民主的な社会で暮らしたいと思っているのだが、中国政府に言わせると台湾の2350万人の住民は、米政府に支援された過激な分離主義一派によって本土から引き離された〝政治的な人質〟だ」とした。


続けて、プーチン氏は「ネオナチの支配下で苦しんでいるウクライナ人を解放するため」と称して軍事侵攻したが、「中国指導部も祖国統一は台湾同胞も含めた中華民族の〝共通の悲願〟だと主張している。彼らが本気でそう信じているかは不明だが、偉大な国家を再興させるには台湾併合を成し遂げねばならぬと執拗かつ、かたくなに思い込んでいることは確かだ」と解説した。

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