北京冬季五輪が4日始まった。大会をめぐっては、中国政府による人権侵害やコロナ対策が報道の大きな比重を占めてきたが、本来の競技に焦点を当てた時、今大会で世界のスポーツメディアが、最も注目するのは間違いなく男子フィギュアスケートの羽生結弦(27)だ。
香港の有力紙サウス・チャイナ・モーニング・ポストは今週、「日本の〝氷上のプリンス〟羽生結弦が、北京2022で歴史的な3つ目の金に照準」との見出しで、五輪3大会連続の金メダルがかかる羽生の特集記事を掲載した。
同紙は羽生の滑りに「全ての人々の目が集まる」とし、「連覇中のディフェンディングチャンピオンは、彼を愛する世界中の〝Fanyu〟(羽生ファン)たちが見守る中、完全メガワットのスターパワーで今大会を飾る」と報じた。もし羽生が優勝すれば、男子フィギュアスケート・シングルスではスウェーデンのギリス・グラフストローム以来94年ぶりの偉業となる。グラフストロームは1920年アントワープ、24年シャモニー、28年サンモリッツで金メダルを獲得した。
欧州のスポーツ専門局「ユーロスポート」は、羽生がまだ人類が誰も成功させたことのないクアッドアクセル(4アクセル=4回転半ジャンプ)に挑戦するだろうとし、その難しさについて、「圧倒的なスピードをもってジャンプし、空中で4回転半した後、完璧な着地が要求される」と解説した。その上で、「もし夢のクアッドアクセルを成功させれば、ライバルの誰も追いつけない高得点になるが、そのリスクはあまりに高い」とも指摘した。
同局はまた、近年の男子シングルスは激戦で、フィギュアスケートをこれほどまで高水準に押し上げた立役者は羽生だと断言した。中でも今五輪を通してハイライトになるのは羽生vsネイサン・チェン(22、米国代表)の直接対決だと予想した。
その2人の軌跡を紹介したのは米国のNBCニュースだ。「羽生とチェンは互いに切磋琢磨しながら、フィギュアスケートの偉大さの意味を改めて定義した」との見出しで両選手の関係性にも触れた。羽生が14年ソチと18年平昌で金メダルを獲得したのに対し、チェンは過去3回連続で世界選手権優勝、17~19年の3年連続グランプリファイナル優勝、また昨シーズンの世界ランキング1位という輝かしい成績を収めている。
ところが、羽生とチェンは数ある世界大会の中、同じ大会で戦ったのは6シーズンで9回のみ。NBCは「それだけにワクワクせずにいられない。期待感は高まるばかりだ」と歴史的対決になる予感を伝えた。