2022-02-03 経済

北京冬季五輪出場選手の「表現の自由」に懸念 人権問題発言は中国の規制に反し処罰対象?

© Photo Credit: AP / TPG Images

明日開幕する北京冬季五輪。世界から中国政府によるウイグル人など少数民族への人権問題や、香港での言論弾圧に批判が渦巻く中、選手たちの「表現の自由」をめぐる懸念が広がっている。

2002年ソルトレークシティ五輪ショートトラックの金メダリストで、北京冬季五輪アスリート委員会の楊揚(よう・よう)会長は1日の記者会見で、「選手がもし論争中の問題について発言する場合は、自身の責任を持つ必要がある」と警告した。

揚氏は五輪憲章第50条に触れ、選手はミックスゾーンやインタビューで自由な発言が保障されていると強調。ただ、表彰台での政治的な抗議行動については許されないと念を押した。第50条とは、選手が競技会場や選手村で政治的、宗教的、人種的な宣伝活動を禁じているものだが、国際オリンピック委員会(IOC)は昨年、一部を緩和。表彰台など一定の場所を除いて、選手が差別などへ抗議の意思を示すことが認められた。

ところが、英紙ガーディアンは、揚氏の説明があいまいで、「中国政府への人権問題批判はしないよう、あらかじめ選手に忠告したもの」と解釈できるとした。

第50条について楊氏は、「どこでも、いつでも、どのような表現であれ、はっきりと選手の言論の自由をうたっている。五輪選手は世界で手本となる存在で、注目度も高い。もし自分の意見を共有したいなら、それも大切だ」と一般論を述べた。

その上で、同条項は一定の厳しい条件がつけられていると指摘。「選手は自分の発言に責任を持つ必要がある」と釘を刺し、「(アスリート委員会は)IOCと共に第50条が厳密に遵守されているか確認していく」と明言した。

楊氏の会見内容は、北京冬季五輪大会組織委員会の上級役員が先月、「オリンピック精神に反した行動や発言、特に中国の法や規制に違反するものは、いかなるものも特定の処罰の対象となる」との警告を事実上繰り返したものだ。同役員は処罰として、選手の参加資格の剥奪もあり得るとした。

そんな監視国家から選手の身を守る動きも出ている。米CNNによると、米連邦捜査局(FBI)は中国当局による「悪意あるサイバー攻撃」に遭うことを想定し、北京冬季五輪の参加選手全員に、個人のケータイやパソコンを中国に持ち込まないよう勧告し、現地では使い捨てなどの代用品を使うよう求めた。また、オランダ・オリンピック委員会も同様の注意を自国選手団に促している。

また、西側では日常的に使われているツイッターやインスタグラム、フェイスブックなどのプラットフォームが中国国内では利用できず、中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」や同メッセージアプリ「微信(ウェイシン)」が使われている。だが、これらのサービスを中国当局が監視・検閲しているのは確実とみられている。

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