―コロナ禍の奇跡―
世界中が新型肺炎ウイルスに見舞われた2020年、飲食・レストラン、小売業の営業額は10~20%も落ち込んだが、2,3か月で回復した(グラフ参照)。世界主要先進国の経済成長がコロナ禍で鈍化する中、台湾は当初からマスク着用、空海港水際対策など感染拡大阻止に成功した。但し、感染対策で市民生活がある程度抑制されたことから、内需そのものは一時期マイナスとなった。GDP成長率の主要寄与度も、2019年には好調だった内需寄与度が、コロナの影響で2020年に2%前後落ち込んだが、外需寄与度が4%伸びて内需の落ち込みをカバーした。2020年はコロナに対して生活様式や対策が固定せず、しかも外国人観光客や出張者が激減し、観光業・飲食業・旅館/ホテル業を中心に内需は多大なダメージを受けた。2021年に夏になると、台湾でも感染者が一時期急増し、前年に比べると感染状況が深刻化したが、感染対策システム化もすでに滞りなく運用されており、外需はリモートビジネスで、内需は自国民ビジネスの展開で難なく乗り切ることができた。そのため、内需・外需ともGDPの成長に大きく貢献し、成長率は年6.09%、一人当たりの実質GDPは3万米ドルを超えた。貿易面でも輸出入ともに30%前後伸び、653億ドルの貿易黒字となった。台湾は米国、中国という巨大マーケットを持っており、この2大国への輸出だけで1300億ドル以上の貿易黒字をもたらした。中東、日本との貿易で合わせて460億ドル以上の赤字であっても、収支は653億ドルの黒字に達した。コロナ禍でも経済成長率は10年ぶりに最高値を記録した。
2021年1月 日本台湾交流協会「台湾の主要経済指数の動向」
ではなぜ台湾は好調を維持できているのか。その理由は貿易構造にある。台湾の主要輸入品は、石油、天然ガス、石炭、鉄鋼、ファインケミカル、布製品などで、内外向け製品を製造し続けるためには不可欠なものが多い。一方、主要輸出品は半導体、無線通信機器、電子機器、コンピュータなどで、貿易相手国におけるコロナ感染者の増減に左右されにくい品目が並び、尚且つ、リモート授業や在宅勤務など、人々の生活様式が遠距離活動に移行しつつあるなか、IT産業、通信機器、電子機器など台湾の輸出総額の半分以上を占める電子産業が大きな恩恵を享受した。輸出はこれからも台湾経済成長の主な牽引力となり続けるだろう。
40年前に私が感じたノスタルジーなど、もはや、どこにもない。