注目ポイント
藤本壮介氏は「建物はある意味で実は非常に暴力的だと言えます。壁が空間を内と外に隔て、それにより人々の動きを制限する恐れもあるのです。でも実はそのように白黒をつけるのではなく、ぼかして、境界線を曖昧(あいまい)にすることで、人々がより快適に過ごせるグレーゾーンを作り上げるべきなのです」と言います。
複合文化施設は街の中心から少し離れた、背後に美しい山並みをのぞむ場所にあります。藤本氏はこの場所に、遠くから見ても近くから見ても、親近感を与えることのできる、石巻市の新しい顔を作りたいと願ったのです。そして建築デザインの面では、劇場の高い天井に合わせると同時に、展示空間の完全性を考慮する必要がありました。彼は思い切って異なる機能をいくつかの異なるサイズのブロックに分け、身近な家の形状を用いて機能を組み込み、吹き抜けの屋内廊下でつなぐことで、一つの大きな建物にしたのです。
遠くから見ると、大小様々な形状の白い家が積み重なって大きな建物を形作っています。工場のようで、それもとても可愛い工場のように見えます。大きさと形状が異なる家なので、内部空間や天井の高さも様々に変化しています。室内の空中に浮かぶ四角い箱とユニークな表示のデザイン、そして材質がわずかに変化することで、シンプルな白い空間をとても面白みのあるものにしています。劇場とミュージアムの内部を見学する機会はなかったのですが、この面白い共用スペースだけでも、名残惜しい気持ちにさせられました。

© 東京建築女子
石巻市周辺の復興活動は今も続けられており、街も少しずつ活気を取り戻してきました。この可愛らしくて親しみやすい文化施設が加わり、人々も少しずつ痛みを解き放ち、もう一度、より良い人生と未来を共に楽しく歩もうとしているのです。
原文作者: 東京建築女子
原文責任編集者: 蕭汎如
原文校閲者: 翁世航
翻訳者: TNL JP編集部
校閱者: TNL JP編集部