2021-11-30 観光

暴力的な建物の中に快適さを感じるグレーゾーンを作り出す ー 藤本壮介氏の「石巻市複合文化施設」

注目ポイント

藤本壮介氏は「建物はある意味で実は非常に暴力的だと言えます。壁が空間を内と外に隔て、それにより人々の動きを制限する恐れもあるのです。でも実はそのように白黒をつけるのではなく、ぼかして、境界線を曖昧(あいまい)にすることで、人々がより快適に過ごせるグレーゾーンを作り上げるべきなのです」と言います。

日本の建築家の多くはこの業界で数年間修行し、大手建築事務所から独立すると、起業して自分で仕事を始めます。建築業界もそれぞれの系譜を非常に重視しており、一人の建築士と会うまでは、その人の出身から理解しようとします。しかし、建築家・藤本壮介氏は、それとは逆の道を進むことに決めのです。

 

1994年に東京大学建築学科を卒業後、すぐに就職はせず、毎日様々な建築タイプについて繰り返し考え、建築とは何かと考えていました。そして時々、デザインコンペに応募したり、時には医師である父親の友人からの案件を受けるなどして、6年間、「すねかじり」をしていたのです。

 

そして2000年、ついに青森県立美術館のデザインコンペで、多くの有名建築家を打ち負かして2位に入賞し(1位は青木淳)、一躍有名になりました。日本の建築界で頭角を表し、同年、藤本壮介建築設計事務所を設立して、多くの非常に素晴らしい作品を作り始めたのです。

© 東京建築女子

彼は常に建物と空間の様々な可能性を探求し、挑戦し続けており、ユニークなデザインスタイルで数々の賞を受賞しています。また、徐々に海外でも知られるようになり、今や世界的に有名な建築家となりました。彼の建築は「自然で混沌とした空間」と「人工的で混沌とした空間」を探求し、自然と人工との間にある境界線を曖昧にしようとし、人工的に作られた「建物」の中に、様々な方法で「自然」を組み入れようとしています。

 

彼は「建物はある意味で実は非常に暴力的だと言えます。壁が空間を内と外に隔て、それにより人々の動きを制限する恐れもあるのです。でも実はそのように白黒をつけるのではなく、ぼかし、境界線を曖昧にすることで、人々がより快適に過ごせるグレーゾーンを作り上げるべきなのです」と言います。

 

近年、彼の作品はさらに建築の将来性について論じるようになりました。彼は、完成後の建物は街の一部となり、変化と成長を続けていくものだと考えているのです。2020年に完成した「白井屋ホテル」(群馬県)と、2021年にオープンした石巻市複合文化施設(宮城県)は、新しい建築モデルを使って街との関係をつなぎ、さらに環境の美学と活力を高めようと試みています。

© 東京建築女子

© 東京建築女子

宮城県石巻市は、3.11東日本大震災の時に大規模な被害を受けた地域の一つです。もともとあった「石巻市民会館」と「石巻文化センター」が震災によって損壊したため、再建が決定されました。これからの街の文化の発信と伝承を考慮して、政府は「博物館の機能」と「劇場の機能」などを持つ文化施設を集めた「石巻市複合文化施設」プランを提出し、各方面の専門家によるデザインコンペが開催されました。最終的に藤本壮介氏のプランが、審査員と住民の票を集め、優勝し、さまざまな調整と建設工事を経て、今年の春、ついにオープンしました。

 

複合文化施設は街の中心から少し離れた、背後に美しい山並みをのぞむ場所にあります。藤本氏はこの場所に、遠くから見ても近くから見ても、親近感を与えることのできる、石巻市の新しい顔を作りたいと願ったのです。そして建築デザインの面では、劇場の高い天井に合わせると同時に、展示空間の完全性を考慮する必要がありました。彼は思い切って異なる機能をいくつかの異なるサイズのブロックに分け、身近な家の形状を用いて機能を組み込み、吹き抜けの屋内廊下でつなぐことで、一つの大きな建物にしたのです。


遠くから見ると、大小様々な形状の白い家が積み重なって大きな建物を形作っています。工場のようで、それもとても可愛い工場のように見えます。大きさと形状が異なる家なので、内部空間や天井の高さも様々に変化しています。室内の空中に浮かぶ四角い箱とユニークな表示のデザイン、そして材質がわずかに変化することで、シンプルな白い空間をとても面白みのあるものにしています。劇場とミュージアムの内部を見学する機会はなかったのですが、この面白い共用スペースだけでも、名残惜しい気持ちにさせられました。

© 東京建築女子

石巻市周辺の復興活動は今も続けられており、街も少しずつ活気を取り戻してきました。この可愛らしくて親しみやすい文化施設が加わり、人々も少しずつ痛みを解き放ち、もう一度、より良い人生と未来を共に楽しく歩もうとしているのです。


原文作者: 東京建築女子
原文責任編集者: 蕭汎如
原文校閲者: 翁世航
翻訳者: TNL JP編集部
校閱者: TNL JP編集部

あわせて読みたい