2022-01-31 経済

開幕まで4日に迫った北京冬季五輪で中国の目論見ーコロナ禍を理由に人権問題への抗議活動も完全封鎖

© AP/TPG Images


新型コロナウイルスのオミクロン株による感染爆発が続く世界をよそに、国家の威信をかけて「ゼロコロナ」政策を貫く中国政府は、2022年北京冬季五輪の開幕を目前に控え、選手・関係者を外部との接触を遮断する「バブル方式」を徹底。張り詰める空気の中、海外からの選手団は続々と北京に到着している。

仏AFP通信の技術部門の責任者、フランシス・ザビエル・マリット氏は、「北京に着いたらまるで月面に来たみたいで、少し脅威に感じた」と空港到着時の中国側の対応について感想を漏らした。空港では職員が頭のてっぺんからつま先まで完全防護服に身を包み、到着した外国人にはマンツーマンで付き添い、PCR検査を行うなど厳戒態勢を敷いているのだ。

海外からは約1万1000人の選手や五輪関係者、取材陣、ゲストらが北京入りするとされ、すでに約半数の5400人以上が現地入りしている。そんな中、米誌「ニューズウィーク」は、29日時点で新たに選手ら34人の新規感染が判明し、これまでで計139人になったと伝えた。ちなみに、中国政府は五輪期間に合わせ、ほぼ全ての国際便の発着を中止し、外国人選手らは直行のチャーター便で北京に到着している。

「ゼロコロナ」政策の成功を世界に誇示し、五輪開催に習近平体制の威信をかけた中国が神経をとがらせているのはオミクロンだけではない。

西側各国は新疆ウイグル自治区でのウイグル人ら少数民族への集団的迫害、また香港での言論封鎖など人権問題に焦点を当て、人権活動家らは今大会を“ジェノサイド(民族大量虐殺)五輪”と命名。米国をはじめ英国、オーストラリア、カナダなどは抗議の証として「政治的ボイコット」に踏み切った。これに対し、中国当局は「悪意ある憶測」だと米国などを批判している

そんな中、中国外務省は先週、政府首脳や王族など32人が開会式に出席すると発表。中国共産党系英字紙グローバル・タイムズは、「米国が主導した外交的ボイコットは失敗し、世界中からリーダー32人が北京五輪に出席へ」との見出しで、ボイコットを決めた西側諸国を「小集団」とし「取るに足らない声」だと嘲笑してみせた。

実は08年の北京五輪の際にも、西側政府や人権団体などから中国のチベットでの残虐行為に対する批判が沸き起こったが、それをかわして開催にこぎつけた過去がある。英紙ガーディアンは、人権問題をめぐる抗議行動の高まりも、一端大会が始まってしまえば世界の目は競技に向けられることを中国政府は08年に学んだとし、今回も同じようになると算段していると伝えた。

さらに、中国では市民による反政府デモが事実上禁止されている上、都合のいいことにコロナ禍という状況下、当局は大会会場などで外国人による抗議活動を心配する必要もなくなったと同紙は指摘した。

選手や関係者は北京市民からは完全隔離され、競技会場と宿泊施設だけで過ごし、移動は専用レーンを走る特別車両を使用する。大会に携わる中国側のスタッフには長期の隔離期間が課せられ、それまで帰宅できないという。観客についても、北京五輪組織委員会は、従来予定していたチケットの一般販売は行わず、限定して受け入れると発表している。

米ワシントンにある戦略国際問題研究所のビクター・チャ上級副所長はガーディアンに、中国当局による厳格な運営上の規制は、「言い換えれば、いかに中国共産党が閉鎖的なシステムを敷き、この大会を完全にコントロールしたいかということを物語っている」とした上で、「コロナ禍はまさに全てを封鎖するには、格好の理由付けになった」と解説した。

 

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