北朝鮮は27日午前、またもや日本海に向けて短距離弾道ミサイルとみられる飛翔体2発を発射した。今年に入り6度目の発射実験で、すでに昨年1年分に匹敵する回数だ。米紙ニューヨーク・タイムズは、金正恩(キム・ジョンウン)総書記のメッセージは明白だという。「米国に無視されていることに反発し、困窮している北朝鮮にバイデン政権が再度注目するよう求めている」と分析した。
同紙によると、正恩氏はここ数年で米国の大統領から譲歩を引き出すには新兵器の使用が最も有効で、「実行するのは世界情勢が不安材料を最も許容できない時期」ということを学習したという。
つまり、中国は来月開催される北京冬季五輪の準備に追われ、韓国は3月に大統領選を控え、ロシアはウクライナ侵攻をちらつかせてバイデン政権と対峙している2022年初頭の今が絶好の機会だというのだ。
正恩氏は19日に開かれた朝鮮労働党中央委員会政治局会議で、18年6月に当時のトランプ米大統領との首脳会議が決定したことで、暫定的に中止していた核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射など「全活動」の再開を示唆し、米国をけん制してみせた。
米タフツ大学フレッチャー法律外交大学院の北朝鮮専門家・李晟允(イ・ソンユン)教授はニューヨーク・タイムズに、「正恩氏の狙いは短距離弾道ミサイルの発射を既成事実として日常化すること。その後は2017年にやったように、核実験を織り交ぜながら中距離や長距離ミサイルの発射実験を再開することで、よりインパクトのある挑発行動に移ることだ」と指摘した。
その17年に北朝鮮は水爆とされる核実験と大陸間弾道ミサイル3発を発射した。この年はトランプ氏が米大統領に就任して国民を分断し、韓国では当時の朴槿恵(パク・クネ)大統領が弾劾で罷免された激動の年でもあった。
その方法で米国を再び交渉のテーブルに着かせることを試みているが、バイデン政権にとって北朝鮮は、外交リストの下位でしかないと同紙は指摘。ワシントンは正恩氏に「再交渉の扉は開かれている」という煮え切らないメッセージを打診するのみだ。
一方、北朝鮮はその間に軍事技術を着実に進歩させてきた。今年最初に発射した短距離弾道ミサイルは、通常弾頭または核弾頭の搭載が可能な「極超音速滑空体」と呼ばれるものだった。
また、13日に発射された「KN―23」は3種類ある固形燃料を使った新型弾道ミサイルの一つで、北朝鮮が19年から実験を繰り返しているものだ。固形燃料タイプのミサイルは移動や発射が容易である上、KN-23は低空飛行できるため迎撃が困難とされる。すでに昨年10月にはKN―23を潜水艦から、同9月と今月には列車から、そして25日には発射台付き車両から発射実験を行っている。