日本では今年に入り、新型コロナウイルスのオミクロン株による感染が激増したが、それとはケタ違いの感染爆発をした欧州は、新たな局面を迎えている。この変異株が同地域ではパンデミックの“エンドゲーム”になる可能性があると世界保健機関(WHO)が示したのだ。
WHOのハンス・クルーゲ欧州地域事務局長は今週、AFP通信とのインタビューで、3月までに6割のヨーロッパ人がオミクロン株に感染すると推測。そのため欧州ではパンデミックが収束に向かうという見方もできると発言した。実際、イタリア政府は24日、新規感染者が減少に転じ、ピークアウトしたと発表した。
クルーゲ氏は、欧州のほぼ全土で猛威を振るったオミクロン株が収まれば、「ワクチンや感染により免疫を得たことで、数週間から数か月間、感染者が減る季節でもあり、広範囲で免疫が獲得された状態になる」と説明。「落ち着いた時期の後、新型コロナは再び年末にかけて戻ってくるだろうが、これまでのようなパンデミックではないかも知れない」と付け加えた。
この傾向は感染者が世界最多の米国でも報告されている。ファウチ米大統領首席医療顧問は23日、米ABCのニュース番組「ディス・ウィーク」に出演し、新規感染者が地域により「急激に減少している」とし、「良い方向に向かっている」と述べた。
予断は許さないとしつつも、ファウチ氏はワシントン州など北東部の州で新規感染者が減少し、近い将来、米国全土で同様の傾向がみられるだろうと予測した。
また、WHOのアフリカ地域事務局も先週、同地域で新規感染者数が下降し、オミクロン株がデルタ株に置き換わった「第4波」が始まって以来、初めて死者数も減ったと発表した。
多くの死者や重症者を出したデルタ株に比べ、オミクロン株は感染力はより強いものの、重症化する確率は低いことがすでに分かっている。専門家は新型コロナウイルスによるパンデミックが、インフルエンザなどのようなエンデミックに移行していくことを期待しているが、クルーゲ氏はこのウイルスが、さらに新たな変異株を生む可能性もあると指摘し、警戒を呼び掛けている。
そんな中、欧州委員会のティエリー・ブルトン域内市場局長は23日、欧州でのワクチン製造についてブリーフィングし、今後どのような変異種が出現しても、既存のワクチンを改良することで対応できるという見解を示した。
ブルトン氏は、「たとえ毒性の強い変異株が出てきたとしても、すでにワクチンの準備はできている。特にメッセンジャーRNAについては大丈夫だ」と強調した。