緊迫するウクライナ情勢をめぐり、米国のブリンケン国務長官とロシアのラブロフ外相による先週末の緊急会談は不発に終わり、今週改めて会談することになった。その間、NATO(北大西洋条約機構)加盟国で旧ソ連のエストニア、ラトビア、リトアニアのバルト3国はウクライナに米国製ミサイルを提供すると発表。ウクライナの米国大使館ではスタッフやその家族が撤退準備を始めるなど、周辺の動きも慌ただしくなっている。
そんな中、ラブロフ氏は「ウクライナ国民を脅かしたことは一度もない」と明言。その発言の裏で、ロシアはウクライナ東部の国境付近に10万人規模の兵力を集結させ、ウクライナ北部と国境を接するロシアの同盟国ベラルーシにも部隊を配備し、一触即発の状況が続いている。
米国をはじめ西側は、「もしロシアが侵攻すれば、前例のない規模の制裁で報復する」とけん制しているが、英紙フィナンシャル・タイムズは23日、西側によるロシアの孤立化や制裁の狙いも、中国がロシアを支援することで効果は失われると分析した。
同紙は、「ロシアと中国がもくろむ新たな世界秩序」という見出しで、特集記事を掲載。「モスクワと北京にとって、ウクライナ危機は米国の力を削ぎ、専制主義の安泰な世界を実現するための戦い」だと解説した。
来月4日の北京冬季五輪の開幕式に主席するロシアのプーチン大統領は、中国の習近平国家主席と会談し、両国の友好関係を誇示する。先月行われた両首脳のオンライン会談では、習氏はロシアが求めるウクライナのNATO加盟阻止を支持した。
同紙は、10年前なら今のような中露関係はあり得なかったが、両国は米国との関係が悪化する中、“呉越同舟”の構図を築いたと指摘。中国メディアによると、習氏はオンライン会談でプーチン氏に、「一定の国際勢力が民主主義と人権という名のもと、中国とロシアの内政に対して独善的に干渉している」と述べた。これは習氏とプーチン氏が、「中露それぞれの政府を弱体化させ、転覆させるという米国の策略」を共通認識として再確認したものだ。
共産主義の全盛期では、中国とロシアは世界中の革命勢力を支援してきた。だが、今は逆に反革命を推進している。直近の例が中央アジア・カザフスタンの動乱だ。きっかけは今月初めに起きた燃料価格の高騰に抗議する反政府デモで、その矛先はソ連末期から30年以上君臨してきた事実上の最高指導者・ナザルバエフ前大統領に向けられた。