台湾で世界ランキング1位、と言えば、半導体生産能力、男子柔道選手の楊勇緯、一番行きたい海外旅行先、医療ヘルスケア指数、などいくつかあるが、台湾で長年トップの座に君臨しているのが女子バドミントンの戴姿穎(タイ・ツーイン)選手であろう。東京オリンピックの開会式で台湾が入場した際、NHKのアナウンサーが主に紹介したのは戴姿穎のことだった。
戴姿穎は台湾南部の都市、高雄生まれの27歳。小学3年生の時にバドミントンを始めたが、ほとんどの子供がやっているような徐々に年相応にレベルを上げていく練習ではなくて、父親の勧めで、いろいろな試合や大会に参加することによって、腕を磨いてきた。16歳の時、世界大会で優勝した。これは当時の最年少優勝記録となった。2016年、6大会で連続優勝し、世界ランキング1位となった。またこの年、ユニバーシアード史上、台湾が初めてホストになったことを誇りに思った戴姿穎は、同時期に開催された世界大会を敢えて欠場して、ユニバーシアードに出場した。蔡英文総統はこの行為を褒めたたえ、戴に特別功労賞が贈られた。
2018年、山口茜、奥原希望と何度も死闘を繰り広げてきた戴姿穎は、山口茜に世界ランキング1位を奪われたが、たった2週間で奪い返した。東京オリンピックの決勝戦では中国の陳雨菲に敗れ、銀メダルに終わったが、ランキング1位の最長記録は更新中である。
長年ランキング1位に君臨している戴姿穎は台湾で大人気、バドミントンクイーン(球后)と呼ばれている。

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戴姿頴は大変な家族思いだし、また家族も彼女へのサポートを惜しまない。より強く打ち返すために戴姿頴は太いグリップを好む。試合の前にラケットにグリップクロスを巻くのだが、戴のおばあちゃんはグリップクロスの布を引っ張るのをいつも手伝ってくれる。去年、戴は足の悪いそのおばあちゃんのためにエレベータ付きの家を購入した。
また、東京オリンピック女子シングルの決勝戦は台湾のスポーツ専用チャンネルでも放送されたが、バドミントン評論家をやりながら妹を支えてきた彼女の姉が額に「勝」という字を書いて妹の試合をテレビ解説していた。ところがその字が左右反転していたのがテレビにばっちり映り、結局、試合に敗れたのは、お姉さんがおでこに字を逆に書いたから「勝」が逆になった、つまり「敗」になったと、ネチズンにからかわれた。
戴姿穎は義理堅いところもある。リオデジャネイロ五輪で彼女は、台湾バドミントン協会のスポンサーロゴがはいったシューズが合わなくて、個人スポンサーのロゴ入りのシューズを履いて試合をしたが、協会スポンサーに義理立てするために個人スポンサーのロゴをテープで隠して試合をした。ただ、その努力虚しく、試合後、協会との間で議論が起こってしまった。