2022-01-20 ライフ

「思いが世界を変える」

© Photo Credit: ©Kai Nakamura

ホールの架構も樹木を意識した放射状に重なる形式とし、ホールの柱を設けずとも構造的に成立する構造としました。そのことで正面から見た時に集中線的な効果によって仏像の正面性が高まるけれども[fig6]、側面から見たときにトップライトから落ちる光によって収納側の扉が照らされ[fig7]、側面にも重心がある2重の軸性を生み出しました。

[fig6] ©Kai Nakamura

[fig7] ©Kai Nakamura

そのため、結婚式で使われている時の写真を見ると、トップライトの光の下で、新郎新婦が照らされ、主役として見えるのですが、仏様の象徴性も失わず、両立している状況を生み出しています。[fig8]

[fig8] ©PERSIMMON HILLS architects

この場所では様々な地域住民が、自らイベントの企画を持ち込みます。声楽コンサートをやりたい、ギターの演奏をしたい、ここを背景に写真を撮りたい、展示会をしたいなどなど。

例えば、光の下で歌う彼女は企画を持ち込んだ一人です。[fig9]とても気持ちよさそうに歌っています。僕たちがこうすれば宗教行事だけでなく、もっと地域の中心となるような場を埋めるのではないか、という思いが形になり、それを見た地域住民が別の欲望を喚起され、また新しい場が生まれる、というサイクルがここでは生まれています。

[fig9] クライアント撮影

機能主義という言葉があります。これはある特定の役割に特化して使いやすくする、という意味がこめられています。これは方程式を入力すると決まった答えが導かれる機械のようなイメージです。

でも「機能」って本当にそんな意味なのでしょうか?

「機能」とは「使ってみたくなる/挑んでみたくなる」という意味で、人間の能動的な欲望を喚起するものだと考えています。

仏さまの前で歌いたいとか、光の下で歌いたいとか、参道でマルシェをしたいとかこういう、人の欲望の掻き立て方をいろんな場所でいろんな使い方を取り出せるように設計時から考えることでお施主さんと運用について考えてきた結果、街の人にもどんどんと使われるようになりました。

形や形式という見えるものが、見えない思いを動かし、その思いによって動かされ、少しずつ見えている世界が変わっていく。そういったサイクルを生み出すことが建築家として役割だと感じています。

 

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