2022-04-18 経済

北朝鮮の異常なタワマン事情が明るみに… 上層階ほどセレブでなく貧困者になる理由

© Photo Credit: Reuters / 達志影像

北朝鮮の首都・平壌東部の松新・松花(ソンシン・ソンファ)地区で先ごろ、80階建ての超高層タワーマンションを含む、大規模ニュータウンの竣工式が行われた。式には金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記が出席したことが先週話題になった。同国でも高層住宅は多く建設されているというが、セレブの象徴とされる上層階に住むのは一体どのような市民なのか。ロイター通信が衝撃の北朝鮮のタワマン事情を解説した。

北朝鮮ではごく一部の富裕層が、最上階のペントハウスに住んでいるのかと思いきや、実は高層住宅では上層階になればなるほど生活困窮者が住んでいると、ある脱北者らがロイター通信に証言した。

北朝鮮の高層住宅では、実は稼働しているエレベーターが少なく、電気や水道のトラブル、安全上の問題が多いというのだ。31歳の脱北者は、「北朝鮮では金持ちではなく、貧乏人が〝ペントハウス〟に住むんです。エレベーターは動かないし、水圧が低くて上層階まで水が汲み上げられない」と明かした。

また、「40階建ての28階に住んでいた私の友人は、エレベーターを使ったことがないと話していた。ほとんど動かないからです。多くのエレベーターは朝6時から8時の出勤時間帯だけ動いていて、夕方も同じように帰宅時間帯だけだった」と話した。

同国では住宅は当局から与えられるものであり、人民に住居の選択肢はほぼ存在せず、住居の売買も禁止されているという。

北朝鮮国営メディアによると、住宅開発は正恩氏の重要な政策目標と位置付けられ、今後、数千戸規模の新たな宅地開発を掲げている。正恩氏が国家機構のトップに就任してから10年の節目を迎えた13日に公開された80階建てタワマンを含むニュータウンの総戸数は1万戸だとしている。

だが、前出の脱北者にしてみれば、北朝鮮当局の発表は、「いかに建設技術が発展したかを誇示するためだけの芝居がかった演出だ」と指摘し、人民のことは二の次だと言い放った。しかも、新規宅地開発は平壌に限られたものだという。

韓国・ソウルが拠点の北朝鮮専門ニュースサイト「デーリーNK」の李湘勇編集長は、同脱北者の証言を裏付けるように、「一般人向け集合住宅の部屋は住めるような状態ではない」とし、「窓は窓枠だけだし、水道の蛇口は設置されているものの水は出ない」と説明した。

ただし、先日完成したタワマンなどは、「家具や必要な器具が全て備わっている」とし、これらは北朝鮮内外に経済発展をアピールするための例外だと分析した。

その一つが13日、朝鮮中央テレビの看板アナウンサー李春姫(リ・チュニ)氏に贈られた、正恩氏自ら設計したとする〝豪華住宅〟だ。正恩氏が春姫氏と手をつないで、この新居を見て回る映像が公開され、話題になった。これらの高級住宅は、功労者に提供されるものと報じられ、北朝鮮市民の忠誠心を高める狙いがあるとみられる。

だが、北朝鮮をめぐっては昨年10月、国連のトマス・オヘア・キンタナ北朝鮮人権状況特別報告者が、新型コロナウイルス対策の国境封鎖によって同国経済ひっ迫し、社会的最弱者が「飢餓の恐れ」にさらされていると悲惨な状況を訴えた。つまり、生活に困窮するほとんどの人民にとって、平壌に作られたニュータウンは正恩氏の〝善政〟を演出するためのハリボテでしかないというわけだ。

 

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