日本でも正月明けから激増している新型コロナウイルスのオミクロン株による感染。想像以上の感染力の強さに医療のひっ迫が懸念される中で、3回目のワクチン接種がようやく始まった。一方、コロナ対策が早かったイスラエルは、すでに4回目の接種が進んでいるが、同国の研究者チームは今週、驚きの報告書を公開した。「4回目のワクチンだけではオミクロン株の感染は防止できない」というものだ。
イスラエル最大の医療施設「シェバ・メディカルセンター」の感染症ユニットは予備研究として、3回のワクチン接種済の医療センタースタッフ154人にファイザーのワクチン、同じく120人にモデルナのワクチンを打ち、前者は2週間後、後者は1週間後にそれぞれ4回目のワクチン未接種組と比較、検証。4回目のワクチン接種に関する研究としては世界初としている。
同ユニットのジリ・レゲフ・ヨチャイ理事は、4回目のワクチンを接種した両方のグループは抗体の数が増えたものの、「3回目接種後の増え方と比べると微増だった」とした上で、「おそらくオミクロン株には不十分」だと分析。
ヨチャイ氏は「これまでで分かったことは、オミクロンから身を守り感染を防止するため、いくら優秀なワクチンを打ったとしても必要な抗体レベルには及ばない」と補足した。
イスラエルのナフタリ・ベネット首相は今月4日、医療従事者や高齢者、基礎疾患がある人たちを優先して4回目接種を進めることを発表。シェバ・メディカルセンターでの予備研究データから、「4回目の接種から1週間で抗体が5倍に増加し、安全であることがより高い確度で判明した」と説明していた。ところが最新の研究によって、4回目の接種で抗体が5倍になったとしても、オミクロン株のブレイクスルー感染を防ぐことは難しいということになる。
現地紙タイムズ・オブ・イスラエルによると、人口約930万人の同国では、16日時点で約50万人が4回目のファイザー製ワクチンの接種を終えた。ちなみに、米ジョンズ・ホプキンス大の統計によると、イスラエルの2回ワクチン接種率は66・5%に留まっている。
そんなイスラエルでオミクロン感染が急拡大したのは.日本と同時期の今年になってから。1月に入り新規感染者は1日1万2000人に達し、コロナ禍が始まって以来、同国の過去最高を記録した。
その後もさらに増え続け、イスラエル紙ハアレツによると、この1週間で28万2000人が新規感染し、1日平均は4万人となっている。とはいえ重症患者は現在436人で、前週と比べて倍増したものの、デルタ株によるピーク時の重症者数に比べると3分の1だとしている。