ロシア軍10万人以上がウクライナ国境付近に集結し、戦車を使った挑発的な軍事演習を実施するなど緊張が高まる中、モスクワが関与したとみられるウクライナへの大規模なサイバー攻撃が先週行われ、「軍事侵攻の前触れの可能性もある」と西側メディアが指摘した。
米マイクロソフトは15日、高い破壊力を持つマルウェア(悪意のあるソフトウェア)が、ウクライナの政府や民間のコンピューターネットワークから、数十件検出されたと報告した。ウクライナの政府機関のウェブサイトが、13~14日にかけてサイバー攻撃被害を受けており、マイクロソフトのグローバルネットワークを監視する調査チームは、同マルウェアによるものだと確認した。
ウクライナの安全保障担当高官はこのサイバー攻撃について、ロシアの同盟国であるベラルーシの情報機関に関係するハッカー集団の犯行との見解を示し、ロシア情報機関関連グループが使用したのと酷似したマルウェアだったとしている。
ロイター通信によると、ウクライナ外務省、内閣府、国家安全保障国防会議などのサイトが13日からサイバー攻撃を受け始め、14日にはアクセス不能となった。攻撃を受けた政府サイトには「最悪の事態を覚悟せよ」などと表示されたという。
ウクライナ国家安全保障国防会議のデメデューク副書記は「(画面上の)サイト改変は、裏で行われているさらに破壊的な行為から目をそらすためのものだ。近い将来その結果を実感することになる」とも語った。
このサイバー攻撃について、米国のサリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官は16日、米CBSのニュース番組「フェイス・ザ・ネイション」に出演し、マイクロソフトが検出したマルウェアについて検証中だと述べた。その上で、「ロシアはウクライナへの多角的な挑発行動の一環として、官民ともにサイバー攻撃を仕掛けることはこれまでもずっと警告してきた」と強調した。
サリバン氏は、ロシアがこれまでもサイバー兵器を使ってウクライナを攻撃してきた歴史があるとし、今回の攻撃については「まだ確証は得ていない」としながらも、「結局、ロシアによるものだったとしても何の驚きもない」と付け加えた。
一方、ロシアのペスコフ大統領府報道官は米CNNに対し、同国の関与を否定。「ロシアはサイバー攻撃とは無関係だ。ウクライナは何でもロシアのせいにする。彼らの国の天気が悪いことさえもだ」と主張した。
米紙ニューヨーク・タイムズは、今回のサイバー攻撃がちょうどロシア側が米国とNATO(北大西洋条約機構)の代表団とウクライナ情勢をめぐり、進展のないまま3日間の協議を終えたタイミングだったことを強調した。