英紙タイムズ・オブ・ロンドンは11日、フィンランドとスウェーデンが今夏にもNATO(北大西洋条約機構)に加盟する見通しとなったと報じた。すると12日、ロシア軍がフィンランド国境にミサイル車両を移動しているとみられる動画がツイッターに投稿され、新たな懸念が生じている。
米誌「ニューズウィーク」によると、問題の動画は43秒間撮影されたもので、ロシア国旗を付けた沿岸防衛用地対艦ミサイルシステム搭載の車両「K-300P」2台がフィンランド国境に向かって幹線道路を進んでいる様子をとらえている。動画の後半にはフィンランドの首都ヘルシンキの方向を示す案内標識が映っている。
この動画は「OSINTdefender」というツイッターユーザーが投稿したもので、「レニングラード州ヴィボルグ付近のロシア軍が、K-300P沿岸防衛用地対艦ミサイルシステムを含む重火器をフィンランド湾とフィンランド国境方面へ移動し始めたとの未確認情報がある」とメッセージを添えた。ヴィボルグ市はフィンランド国境まで、わずか50キロ、ヘルシンキまでは約250キロの位置にある。この動画は14日の時点で60万回以上再生されている。
もしこの情報が事実なら、NATO加盟に近づいたフィンランドへのプーチン露大統領の威嚇にほかならない。フィンランドはロシアと1300キロにもわたる国境線で接しており、スターリン時代のソ連による侵攻を受けた歴史もある。そのため、スウェーデン同様、フィンランドはロシアを刺激しないよう軍事同盟非加入の立場を貫き、その引き換えに自由主義経済を維持。欧州連合(EU)にも加盟してきた。
ところが今回、ロシアがウクライナ侵攻したことで欧州の安全保障環境は一変し、フィンランドとスウェーデンはNATO加盟へと一気に動いたのだ。
米CNNは13日、「プーチンのいじめが裏目に出て、フィンランドとスウェーデンをNATO加入へと近づけた」との見出しで、NATOが東方に拡大しないよう強硬に求めてきたプーチン氏は結局、ウクライナ侵攻で逆にNATO加盟国を増やしてしまうという皮肉な結果になりそうだと報じた。
CNNによると、フィンランド政府は今週、同国の安全保障政策を報告書にまとめる。これはNATO加盟への重要なステップで、この報告書をもとにフィンランド国会で加盟申請をするべきかを審議。同国のマリン首相は今夏には結論を出すとしている。
また、フィンランドのハーヴィスト外相は11日、隣国スウェーデンも同様のプロセスを進めることが重要だと強調。「両国は情報交換しており、同様の結論に達し、同じ時期に(NATO加入を)実現できることを希望する」と語った。