さらに、実施までの手順を丁寧に組み立て、計画的に進めていきました。子どもたちと保護者を対象にした食育講座、子どもたち同士の話し合い、日頃自分が使っている弁当箱を持参し給食の献立を弁当箱に詰める体験、栄養士と養護教諭による調理のデモンストレーション、家庭科・総合的な学習時間・学級活動の時間との関連付け。高学年には「カミカミ献立」などもテーマに入れ、歯・口の健康と食べることの大切さを実感させていきました。
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子どもたちが自分で作った弁当を持ち寄った当日。おいしそうに味わい、噛みしめながら楽しく会食する子どもたちの姿がありました。実際に弁当を作る高学年のクラスでは、どのクラスでも、友達の弁当づくりの技をメモするなどして、来年に備えようとする姿が見られました。
「一人でもできることが分かった」「分からないことは、お母さんに相談してできた」「自分が作ったおにぎりやおかずを、家族にも食べてもらえてうれしかった」「次は、もう少し難しい献立に挑戦したい」「家族の分も作ってみたい」・・・。寄せられた感想から、家族に喜んでもらうことで、誰かのために自分にもできることがあることに気付き、やればできるという自信をつけたことが分かりました。
保護者の声もたくさん届きました。「子どもたちに台所を占領されて困った」という声もありましたが、感激を伝える感想が並びました。「子どもの成長を見てうれしかった」「買い物から前日の準備、当日の弁当づくりまで本人も楽しみにしていて、私もハラハラ、ドキドキでした。コミュニケーションや家族の話題も広がり良い機会でした」。
さらに、「一人で作る大変さが分かりました。お母さんは毎日やっているのですごい」という保護者への感謝の気持ちが生まれ、実際に手を動かしたからこその気付きもありました。「すべて計画通りにうまくいくとは限らないことが分かった」「自分で作ってみると、必要な物だけ出して、使わない道具は水につけたりゴミを捨てたりして、場所を作らないと作業ができなかったり、何かしている間に何かをしないといけないことが分かりました」。
大人にとっても、気付かされることは多かったようです。「口も出さず見守ることは大変だった」「初めての一人で作る弁当の日は心配でしたが、作り始めると何の問題も起きませんでした」・・・。
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最後に、この取り組みの中で、印象に残ったエピソードをいくつか紹介します。「食べることは生きること」。子どもたちには、人に食材に感謝して、自分を大切に、自分のために人のために食事の準備ができる人に成長していってほしいと願っています。