2022-04-13 経済

陥落間近とされるウクライナ・マリウポリを 死守する〝最後の砦〟アゾフ連隊とは

© Photo Credit: Reuters / 達志影像

ウクライナのアゾフ特殊作戦分遣隊(通称・アゾフ連隊)は11日、同国南東部の湾岸都市マリウポリで、同隊によって爆破され、真っ赤な炎や黒煙が立ち上るロシア軍戦車数台の空撮映像を公開した。映像には「マリウポリの路上で撃破されるロシア軍戦車」という説明が添えられ、「彼らはわが軍の10倍以上で、軍機や軍艦、十分な装備がある。それでもアゾフ大隊はウクライナ・マリウポリの市街で占領者たちを破壊し続ける」と英語で宣言した。

黒海北部の内海、アゾフ海を臨むドネツク州マリウポリ市は、親ロシア武装勢力が一方的に独立を宣言した「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」を含むウクライナ東部のドンバス地方の要所だ。

すでにロシア軍に包囲され、連日激しい攻撃にさらされている。すでに市街地の9割以上は破壊され、ここ数週間は毎日のように「陥落間近か」と伝えられている。かつて人口40万人だった同市の犠牲者は、すでに推計2万人以上とされる。一方、10万人以上の市民が取り残されているとされ、マリウポリを死守する〝最後の砦〟がアゾフ連隊だ。現在、連隊の兵力は約4000人との情報もあるが、マリウポリの外堀を埋め続けるロシア軍の規模とは大差があることは明らかだ。

そんな中、アゾフ連隊はロシア製SNS「テレグラム」で12日、「ロシア軍から毒物による攻撃を受けた」と主張。ロシア軍がドローンを使って上空から毒物を投下し、住民に呼吸困難などの症状が出たと訴えた。ロシア側は「マリウポリで化学兵器を一切使用していない」と否定している。

米ブルームバーグによると、米国防総省高官は、化学兵器の使用は確認できていないとし、状況を注視していると述べた。ただ、催涙ガスの使用に限られた可能性があり、そうでなければもっと広く拡散したと考えられると語った。

アゾフ連隊はもともと「アゾフ大隊」の名称で、アゾフ海沿岸のマリウポリを拠点に、極右政治家アンドリー・ビレツキー氏自らが司令官として立ち上げたパラミリタリー(準軍事組織)だ。プーチン露大統領はウクライナ侵攻を、「ドンバス地方の親ロシア住民をネオナチから救うため」、あるいは「非ナチ化のため」などと正当性を主張しているが、そのプロパガンダの対象こそが「アゾフ大隊」だった。

実際、英紙ガーディアンも2014年、ビレツキー氏を、「少数派に対するヘイトクライムに関与した、ウクライナの公然たる人種差別的愛国者グループの長」で、「ネオナチ」だと表現した。

だが、「アゾフ大隊」は14年に勃発したドンバス戦争で、国家警備隊として機能するようになり、アゾフ連隊として国家親衛隊に編入されてからは、すでにビレツキー氏ら一部極右勢力とは無関係の軍事組織になっている。

そんな中、政府系のロシア紙プラウダは11日、「アゾフ連隊司令官がマリウポリから逃走した」との見出しで、デニス・プロコペンコ司令官がマリウポリ包囲網をかいくぐり、連隊を置き去りにして逃亡したとするウクライナ議会のイリア・キエワ元議員の話を報じた。同議員はロシア侵攻を支持したことで先月、ウクライナ議会に議員資格をはく奪されている。

同紙によると、プロコペンコ司令官はヘリコプターでマリウポリを脱出し、現在はキーウに滞在しているというが、記事の真偽は確認されていない。

一方、米誌「ニューズウィーク」はウクライナ軍の発表として、2月24日の侵攻開始から今月11日までの期間、ロシア軍が失った兵力は1万9500人に上り、戦車725台、装甲車1923台、大砲347門、多連装ロケットランチャー111台、軍用機154機、ヘリコプター137機などが破壊されたと伝えた。ロシア側は具体的な数字について言及していないが、「大きな損失を受けた」ことは認めている。

そのため、プーチン氏は軍事作戦を統括する司令官にドボルニコフ将軍を新たに起用した。これまでウクライナ南部軍管区で指揮を取り、2015年には内戦下のシリアで民間人への無差別攻撃を行い、〝シリアの虐殺者〟との異名を持つ人物だ。

ドボルニコフ司令官のもとロシア軍は、ウクライナ東部での大規模な戦闘に向けて車両など部隊を集結させ、態勢の立て直しを図っている。ドンバス地方で予想される両軍の攻防に加え、南東部で孤立しているマリウポリのアゾフ連隊にとっても正念場となる。

 

オススメ記事:

深くて長いお付き合い⑥-日本と台湾の野球―台湾プロ野球のチアガールたち―

台湾の最先端半導体技術に虎視眈々の中国、 優秀な人材・知的財産を〝密漁〟の手口とは

不満と疑念渦巻くロックダウンの中国・上海 市民2600万人の食料底つき生命の危険も

コロナ禍の現状に対する実感

月イチ連載「山本一郎の#台湾の件」第1回:台湾に感じる親しみとウクライナ侵攻が孕む他人事とは言えない問題

 

あわせて読みたい