2022-01-31 調査データ

eスポーツは日本でどのように成長できるのであろうか-経済的及び社会的視点からその可能性を探る

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注目ポイント

新型コロナウイルス感染症の大流行により多くの産業が苦境に陥るなか、生活様式の変化が巣ごもり需要を喚起したことにより、ゲーム業界は業績が好調に推移している。日本では家庭用ゲーム機が普及しているため、海外のeスポーツで主流となったPCゲームの発展が少し遅れていたが、東京五輪のプレイベントでのeスポーツ採用等により認知度が高まり、eスポーツ大会の開催数増加や規模の拡大によりプレイヤーやファンが増加しており、今後のeスポーツ市場のさらなる発展が見込まれている。今回の調査では、ゲーム産業のうち、eスポーツに焦点を当て、その関心度や利用実態などの側面から当該市場の現状及び将来の発展を考察する。

 

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eスポーツの起源は、1972年のアメリカとされており、1990年代からPCやファミコン、プレイステーションなどのゲーム機が登場して以来、欧米を中心にeスポーツの機運が高まるも、日本では2018年になって初めて登場したといわれている。これは、日本人のゲーム習慣がスマホゲームと家庭用ゲーム機を中心としていたためである。日本では、コロナウィルスの大流行によりゲーム業界の売上が飛躍的に伸びており、eスポーツへの期待も高まってきてはいるが、日本国民のeスポーツに対する関心度は17%、利用率は6%、イベント参加率は14%といずれも低い。eスポーツは、年齢や性別、場所を問わずプレーできる便利なゲームだが、日本ではeスポーツをゲームと捉えがちで、スポーツ競技としての認識などが足らず、育成や普及が遅れている。海外ではeスポーツとは体を動かすスポーツだけでなく、チェスや囲碁などの頭脳ゲームも含めての「競技」を指す。全世界のeスポーツ競技人口は1億人以上で、プロゲーマーになれば多額の賞金や契約金も入手できる。しかし日本では、スポーツとはサッカーや野球のように体を動かすものであるという認識が強いため、eスポーツがスポーツ競技と認識されにくい。また日本はゲーム大国であるがゆえ、無料基本ゲームとしての期待が大きい。eスポーツは個人の娯楽である一方で、eスポーツは、年齢や性別・国籍・障がい等に関わらず楽しめるだけでなく、複数の人と一緒にプレイするという意味から、経済的な意味を越えて社会学的な意味を帯び、コミュニティとしての生存や娯楽、医療まで枠を広げることができる。2020年に公開された経済産業省の報告[i] によれば、日本のeスポーツ直接市場は 2022 年までに 91 億円に達する見込みである。eスポーツはパラスポーツとしての活用や地域コミュニティの活性化など、コミュニティレベルの娯楽に成り得るため、社会貢献の意味も含めて大きな発展につながると思われ、今後は産学官民による取り組みが期待されている。eスポーツの普及を目的とする今後の課題は、コミュニティレベルでの育成、主に男性ユーザーをターゲットとしたプロモーション、共存社会のイベントとしての認識育成が必要であると言える。

 


[i] 一般社団法人 日本 e スポーツ連合(経済産業省委託)「日本の e スポーツの発展に向けて

~更なる市場成長、社会的意義の観点から~」

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