2022-01-12 経済

“ジョコビッチ騒動”が外交問題に発展 オーストラリア・セルビア両首相が会談

© Reuters / TPG Images

ワクチン接種免除の書類不備を理由に、全豪オープン出場のためオーストラリア到着後、入国ビザを取り消されたものの、豪州連邦地裁により一転して入国を認められたプロテニス世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ選手(34=セルビア)。これまで頑なにワクチン接種を拒否してきた同選手をめぐる今回の騒動は、豪州とセルビア両国の首相が電話会談にいたる外交問題にまで発展している。多くのファンからは、ジョコビッチ支持がSNSを中心に広がる中、テニス界のレジェンドたちやメディアからは、批判が噴出している。

 

17日から始まる4連覇がかかった全豪オープンに出場するため5日にメルボルンの空港に到着したジョコビッチは入国審査の結果、入国が認められず市内のホテルに収容された。その直後、同選手は裁判所に異議を申し立て、ビザの有効性が認められたことは世界中に報じられている。

 

新型コロナウイルスのオミクロン株が爆発的に感染拡大している現在、豪州政府はワクチン接種済であることを条件に外国人の入国を許可。ただし、医学的理由など一定条件を満たせば、ワクチン接種は免除となる。

 

ジョコビッチは昨年12月、PCR検査で新型コロナ感染が確認され、その後回復。それが接種免除の条件にあたると主張し、裁判所に認められた。ただし、豪州の行政当局が再び入国ビザを取り消すこともできるため、同選手が全豪オープンに出場できるかどうかはまだ流動的だ。

 

一方、豪州のモリソン首相とセルビアのブルナビッチ首相は11日、ジョコビッチ問題について電話で会談。AP通信によると、モリソン氏は同国の新型コロナへの水際対策について説明し、ブルナビッチ首相は同選手の尊厳が守られるよう求めた。両者は今後もこの問題について情報を共有することで合意した。

 

これまでの経緯について米紙ワシントン・ポストのコラムニスト、ユージーン・ロビンソン氏は11日、「オーストラリアはノバク・ジョコビッチを退去させよ」という見出しのコラムで、同選手は全豪オープンに参加する資格は無いと主張。豪州という国家のワクチン政策を軽んじるジョコビッチの言い分は「自由」とは関係なく、ただ被害妄想でしかないと痛烈に批判した。

 

チェコスロバキア出身の女子テニス界のレジェンド、マルティナ・ナブラチロワ氏は英情報番組「グッドモーニング・ブリテン」で、ジョコビッチはワクチンへの批判的な態度より、お手本としてすすんで接種すべきだと訴えた。

 

ナブラチロワ氏は「ノバクは最初からワクチン接種をしておくべきだった。彼を敬服しているが、ワクチン接種をしないという選択には同意できない」と切り捨てた。

 

また、ジョコビッチのライバルであるラファエル・ナダル(35=スペイン)は、自国のラジオ番組で「彼の幸運を願う」としながらも「今、世界で最も大切なことはワクチンがこのパンデミックとコロナ禍の20か月を終わらせる手段だということだ」として、ワクチン接種を拒むジョコビッチを遠回しに批判した。

 

そんな中、昨年12月16日にコロナ感染が判明したにも関わらず、ジョコビッチはその翌日、セルビアの首都ベオグラードで行われた同選手を称える記念切手発行の式典に、マスクを着用せずに出席していた。その際、記念の盾を受け取る写真を自身のツイッターに投稿していたことが判明。

 

さらに同日、ジョコビッチは21年に活躍したセルビアの若手テニス選手を表彰するイベントにもマスク無しで出席し、約20人の受賞者たちに記念品を手渡すプレゼンターを務めていたことも明らかになった。ジョコビッチを囲んで受賞者やイベント関係者らが一緒に撮った数枚の記念写真も確認されている。

 

実はジョコビッチは20年6月にも新型コロナウイルスに感染。世界的なパンデミックが急速に感染拡大していた時期で、同選手が主催したエキシビション大会で、自身を含め多くの参加者が感染。そのときは「私たちは間違っていたし、(開催は)早すぎた」として謝罪していた。

 

ジョコビッチの行動については、「多くの人に感染リスクを負わせた」「あまりに無責任」などとSNSで非難する声が広がる一方、ファンは同選手の全豪オープン4連覇に期待し、声援を送っている。

 

豪州当局は近く入国ビザについて新たな判断を示すとみられるが、いずれにせよ、ジョコビッチの危機意識の欠如が引き起こした一連の騒動であることは間違いない。