2022-04-12 経済

台湾の最先端半導体技術に虎視眈々の中国、 優秀な人材・知的財産を〝密漁〟の手口とは

© Photo Credit: Reuters / 達志影像

台湾の法務部調査局は、台湾の半導体技術者やハイテク関連企業の優秀な人材や知的財産を中国が〝密漁〟している疑いで、中国企業約100社について捜査を始めたことを当局の情報筋がロイター通信に明かした。

同捜査局は、昨年からすでに7社を訴追し、27社を家宅捜査、もしくは経営者から事情聴取するため、出頭命令を出したとしている。

世界半導体最大手である台湾積体電路製造(TSMC)を擁し、最先端半導体の世界シェア92%を誇る台湾は、中国が羨望する技術を保持している。特にTSMCは世界最大の半導体受託製造企業であり、世界で最も時価総額の高い半導体企業の一つであり、台湾最大級の企業だ。

そのTSMCは先週、1-3月(第1四半期)の売上高が過去最高を更新したことを明らかにした。半導体不足で販売価格が上昇する一方、スマートフォンやパソコン、自動車向けの需要が寄与したと米ブルームバーグが伝えた。売上高は前年同期比36%増の4911億台湾ドル(約2兆1100億円)を記録。米アップルや韓国のサムスン電子などからのスマホやスマートテレビなど、製品向け半導体需要の堅調さが続いているとしている。

そのTSMCを筆頭に、台湾の最先端半導体企業などの優秀な人材や技術を中国は喉から手が出るほど求めている。そして、世界市場における半導体不足の常態化や、習近平政権が掲げる最先端半導体の自給自足という目標が、中国の違法行為に一層拍車をかけているというのだ。

これに対抗するため、台湾政府は2020年12月、法務部調査局内に対策本部を設置し、中国からの〝密漁者〟を厳しく取り締まる姿勢を打ち出したというわけだ。その活動は翌21年に始動し、これまで7社に対する処分と27社への取り調べを行ったが、捜査関係者は、それらの数は「氷山の一角」と指摘し、さらに約100社を対象に調べを進めていると述べた。

「台湾を自国の領土とする中国からの強まる軍事圧力は、台北政府が半導体技術の優位性を死守するという決意をより一層高めている。それは半導体生産を台湾に外部委託する米国にとっても戦略的に重要な資産である」とロイターは解説した。

同通信社はまた、中国企業が台湾人技術者を雇用すること自体違法ではないとしながらも、台湾の法律は集積回路設計を含む半導体のサプライチェーンの過程に中国資本が流入することを禁じ、電子部品のパッケージ(外周器)などその他の分野でも厳格なチェックを必要とするため、中国の半導体メーカーが合法的に台湾で企業運営することは事実上困難だとしている。

さらに、台湾人技術者が中国に移住することは自由だが、多くは中国より台湾での生活の質を選択するとし、特にコロナ禍の中国では移動することさえも困難で、中国を選択する人は少ないとしている。そのため、台湾内で違法にハイテク技術者や知的財産を〝密漁〟しているというのだ。

その一例はこうだ。「台湾のデータ分析会社」を榜していた企業が、実は上海拠点の半導体メーカーの出先機関で、台湾メーカーから盗んだ集積回路の設計図を中国側に送っていたとする疑惑が浮上した。当局はこの会社を1年にわたり捜査し、先月中旬、同社の経営者を拘束して聴取。その後、保釈されたが、当局は近く訴追の有無を決定する。

また、北京に拠点を置く集積回路設計のスターブレイズ・テクノロジー社は、〝台湾のシリコンバレー〟と呼ばれる北部の新竹市で、許可なくR&D(研究開発)センターを開設した疑いが持たれている。同社はオンライン会議アプリ「Zoom」を使って雇用面接を行い、採用したハイテク技術者に対し、香港企業を迂回して、違法な方法で高額な給与を支払っていたとされる。関係者は起訴され、現在公判中だという。

中国国営・トンフー・マイクロエレクトロニクス(通富微電子)もまた、台湾で違法に会社を運営し、〝密漁〟した台湾人技術者に香港の子会社を迂回してオフショア口座から米ドルで高額賃金を支払っていた。同社関係者は起訴され、今年1月に有罪判決が下された。

一方、蔡英文政権は、半導体のコア技術を外国に流出させる行為を国家安全保障法違反に適用させる法案を提出。中国をにらんだ法整備も進めている。

 

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