注目ポイント
インテルの パット・ゲルシンガー(Pat Gelsinger)CEOは、主要顧客であるアップルからの注文を取り戻すことを表明。アップルのファウンドリとなる可能性も示唆している。業界関係者の間では、ファウンドリのリーダーであるTSMCとその主要な顧客を奪い合うことになるのではないかと指摘されており、アップルが台湾ラーガン社 (Largan Precision)のケースと同様にTSMCに打撃を与えるのではないかとも懸念されている。
アップルの第2回秋の発表会において、主要半導体メーカーであるTSMCとインテルとの間で思いがけず注文獲得競争が起きた。10月18日、インテルのゲルシンガーCEOは「失われたアップル」の注文獲得に引き続き積極的に取り組むと述べ、その前提は「アップルよりも優れたチップを作る」こととしている。
業界関係者はこれについて、インテルの勢いと、先に育てて後で切り捨てるというアップルの戦略がTSMCの将来に暗い影を落とすことを心配している。
昨年6月、アップルは開発者会議WWDCで、新しい自社開発のMac用チップが、長年使用してきたインテルプロセッサに取って代わると発表し、市場は騒然とした。
アップルがインテルを離れると市場でささやかれていたのは事実。実際にアップルは密かに「Kalamata」というプロジェクトを立ち上げ、2020年にはMacに内蔵しているインテルプロセッサを自社開発のチップに替えることを計画していた。
心変わりしたアップルの次のお相手は、英国ケンブリッジにグローバル本社を置く日本のソフトバンク傘下の半導体設計およびソフトウェア企業のARMである。ARMはチップ設計を得意としているが、インテルのような製造能力がないため、TSMCのファウンドリ製造が重要な役割を果たすこととなる。
2020年まで、アップル製品の中でMacのみが唯一、外部製造のプロセッサを搭載していた。当時すでにiPhoneやiPadだけでなく、Apple Watch、Apple TVなどの各種製品はアップルが設計したARMのプロセッサを採用していた。
アップルによるサプライチェーンの調整により、近い将来、Macでさえも自社設計のプロセッサを使用する可能性がある。『Bloomberg』は業界関係者の話として、新たに開発したMacチップはすでにインテルプロセッサよりも優れた性能を持ち、Macbookを薄くコンパクトにしただけではなく、AIソフトウェア、グラフィック性能なども大きく進歩したと伝えている。
大口顧客のアップルが離れていくことについて、インテルのゲルシンガーCEOは「アップルは我々よりも良いチップを作っていると思っている。私たちがしなければならないのは、彼らよりも優れたチップを作ることだ。我々のエコシステムは彼らのものよりもオープンで活力がある」と話している。
インテルがファウンドリの積極的展開を表明していることに関し、本サイト『The News Lens』が台湾経済研究院の産業経済データベースディレクターである劉佩真(Liu Peizhen)氏を取材したところ、現在インテルは努力を重ね、欧米で積極的に援助を獲得しようとしているほか、ヨーロッパで最大950億米ドル(新台湾ドル2.65兆元)にもおよぶチップ工場を建設するという最新情報も伝えられている。