2022-01-05 経済

“シリコンバレーの寵児”ともてはやされた米医療企業の若き女性創業者に有罪評決

© Reuters / TPG Images

わずか19歳で医療ベンチャーを立ち上げ、“革命的な新技術”を打ち出したとして時価総額90億ドル(約1兆円)の企業に押し上げたシリコンバレーの若き女性創業者が、投資詐欺に問われた大型経済事件。米連邦裁判所の陪審は今週、投資家への詐欺罪などで有罪評決を下した。

 

被告の名前はエリザベス・ホームズ(37)。米国の名門スタンフォード大学在学中だった2003年、たった1滴の血液で1000種類の検査が迅速に、しかも安価でできる技術を開発するという名目で「セラノス」社をカリフォルニア州のシリコンバレーに立ち上げ、同大を1年で中退した。

 

ホームズ被告は「月に1回程度の血液検査で、がんなど深刻な病気を早期に検知し、全ての人の健康を守る画期的な技術」という触れ込みで投資を募り、ゼロからスタートしたベンチャービジネスは設立1年で600万ドル(約7億円)、7年で9200万ドル(約100億円)を集めた。

 

また、11年からは元国務長官ジョージ・シュルツ氏をはじめ、同ヘンリー・キッシンジャー氏や元国防長官ジェームズ・マティス氏といった米国トップクラスの大物たちを次々とセラノスの社外取締役に迎え入れ、「米国史上最も有名な取締役会」と称された。

 

“シリコンバレーの寵児”ともてはやされたホームズ被告は「次のスティーブ・ジョブズ」としてメディアの注目を集めると、本人もジョブズを意識してか、発表会などでは常に黒のタートルネックセーターを着用して登場。「セラノスは次世代のアップルになる」との予感は投資家心理をくすぐり、“メディア王” ルパート・マードックを筆頭に投資総額は10億ドル(約1160億円)に迫り、同社の時価総額はピーク時には1兆円とされた。

 

そんなホームズ被告の絶頂期だった15年、セラノス株式の過半数を所有していた同被告の推定資産は45億ドル(約5200億円)に上り、米誌「フォーブス」による15年版「自力で成功した米国の女性長者番付」の1位に上り詰めた。

 

だが同じ年、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが、数か月の調査を要したホームズ被告とセラノスによる不正疑惑に迫る特集記事を掲載。セラノスは自社開発の血液検査器「エジソン」を米ドラッグストア大手「ウォルグリーン」の店舗に設置していたが、内部証言からその診断データは、既存の他社製検査器を使ったものだったことが判明。

 

ホームズ被告は「エジソン」が1000種類の検査が可能と豪語していたが、実際はたった12種類だったことも明らかになった。また、フォーブス誌もセラノスの年商が1億ドル(約116億円)にも達していないことを報じ、セラノスの評価は瞬く間に地に落ちた。

 

さらに16年、医療保険当局がセラノスの臨床検査免許を取り消し処分にしたことで、医療ベンチャーとして致命傷となった。そのため、フォーブス誌による16年版の同長者番付では、ホームズ被告の推定資産はゼロと評価された。

 

ウォール・ストリート・ジャーナル紙などの報道をきっかけに当局も捜査に着手。18年6月には連邦地裁がセラノスの全決済権を握っていたホームズ被告と当時恋人関係にあったサニー・バルワニ最高執行責任者の2人を詐欺罪で起訴。セラノスは同9月、株主に会社の解散を通知した。

 

そんな中、3日に行われた連邦地裁の評決で陪審は、ホームズ被告に対する11の罪状のうち、投資家に対する通信詐欺など4件で有罪とした。確定すると巨額の罰金と最高20年の禁固刑が言い渡されるが、被告側は控訴するとみられる。

 

この裁判はコロナ禍やホームズ被告の妊娠などで開始が大幅に遅れ、昨年9月にようやく公判が始まった。公判ではマティス元国防長官も「ある時点でセラノスの何を信じていいのか分からなくなった」などと証言した。

 

また、同じ罪に問われているバルワニ被告の裁判は今月始まる予定だ。

 

あわせて読みたい