Netflixの台湾ドラマ、「華燈初上(Light the Night)」が今、注目を集めている。人気の秘密は、一つには豪華な大物キャストが大勢出演しているからであろう。林心如、楊謹華、鳳小岳、徐若瑄(ビビアン・スー)などなど、夢のラインナップ。台湾のビッグスターが、台湾一の繁華街・林森北路のクラブを舞台に、そこで働く女性たち、日本人駐在員、街の人々の悲喜こもごもを描いたドラマである。ママさんの殺人事件をベースにストーリーが展開していくのだが、決して単なる刑事物、推理物ドラマではなく、愛と嫉妬と友情が見事に入り混じり、知らず知らずのうちに引き込まれていく。この脚本の緻密さとキャストの素晴らしい演技も、人気の秘密の一つである。
シーズン1もシーズン2も、それぞれ第8話まであり、シーズン2ではあのビビアン・スーがクラブのママさん役で出ている。このドラマで描かれている林森北路の雰囲気がとても懐かしく、正確で、30~40年前の台湾一の歓楽街が、まるでタイムスリップしたかのように、ありありと目の前に現れる。
舞台となったのは1988年の台北、林森北路六条通り・七条通り。ちょうどその頃、筆者の林森北路通いが始まった。そこで、当時と今を比べながら、林森北路を簡単に紹介していこうと思う。
日本統治時代(1895~1945年)は「大正町」と呼ばれており、路地の名前も日本式に「五条通」「六条通」・・・「十条通」であった。この呼び方は今でも通じる。クラブ・スナック・バーが最も多いのは六条通から八条通りであり、30年ぐらい前はほとんどの店のママさんやホステスさんは日本語が話せた。客も9割以上日本人の駐在員や日本からの出張者で、この町は台湾人にとって「日本人の歓楽街」というイメージであった。
店の営業時間は夜8時から深夜1時までだが、この街には出勤前にホステスさんが客と食事をする焼き肉屋、日本料理屋、水餃子屋、台湾ラーメン屋、台湾式小料理屋などが軒を並べ、賑わっている。夜8時、いよいよクラブの営業開始。どの店に入っても、たいてい日本人の知り合いがいた。
深夜1時にクラブが閉まってからも、「アフター」で軽い食事ができる店が遅くまでやっており、飲み足りない客や、遊び足りない女性たちは朝までやっているスナックやホストクラブに行った。
「後編」では、筆者の体験に基づいたエピソードをいくつか紹介しようと思う。