注目ポイント
数字上では、台湾の1人当たりGDPは韓国や日本に追いつこうとしているが、労働者にとって、その恩恵は微々たるものである。なぜなら台湾の基本給は現在、日本や韓国の半分程度であり、労働者が経済成長の恩恵を受けていないことは明らかである。
以上の予測から、韓国と日本の基本給は、2028年までに1人当たりGDPの60%、45%程度で推移し、上昇を続けるものと考えられる。しかし、2028年には、台湾の基本給はさらに下がり、1人当たりGDPの28.9%になる可能性がある。
日本と比較する場合、台湾の基本給は3万元程度、韓国と比較する場合、4万元程度が必要であろう。

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給与の中央値を比較すると、日本は2010年以降、1人当たりGDPが100%前後で推移しているのに対し、韓国は2010年の1人当たりGDPの79.4%から2020年には97.2%に上昇していることが分かった。それに比べて台湾の賃金中央値は、70.1%から、2020年にはわずか59.7%に低下している。
つまり、台湾のGDPのうち、労働者に還元される分がどんどん少なくなっているのだ。日本や韓国と肩を並べるには、今の台湾の賃金の中央値が6万5000台湾ドル程度でなければならない。先述のように、今の生活費に見合う賃金であれば、中央値はその程度であるべきなのだ。

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この比較から、台湾の一人当たりGDPは間もなく日本や韓国と同等になるが、実際はこの2国に比べて、台湾はGDPから労働賃金にほとんど還元されていないことがわかる。前述したように、台湾の賃金の中央値は基本給と密接に関係しており、台湾で基本給が抑制される限り、あらゆる所得レベルの労働者の窮状は影響を受け続けるということだ。
つまり、台湾の労働者が受ける恩恵は日本や韓国に比べれば微々たるものであり、台湾の1人当たりGDPが近隣諸国と同じレベルまで向上したということは、実は何にもならないのである。気にしなければならないのは、1人当たりのGDPではなく、台湾の労働者の生活費ニーズを満たすだけの賃上げがなされているかどうかということである。
これまで指摘してきたように、台湾の基本給は、台湾での生活費をまかなうにはまだまだ不十分である。Yahoo Chima Newsが行った調査によると、台湾の回答者の45.6%が、今年の基本給をさらに引き上げるべきと考えていることがわかった。

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基本給をどれだけ上げるかについては、回答者が最も同意した案は、少なくとも10.9%高くすることであった。

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要するに、労働者の賃金が低迷しているのに、1人当たりのGDPが増えたと喜んでも意味がないのである。
政府は、基本給を台湾の基本的な生活水準を満たすのに十分な水準に引き上げるために、より一層の努力と計画の策定が必要である。
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