注目ポイント
台湾と日本は、これまでの西進・南下型のビジネス開発モデルが、時代遅れになっていないかを考え直す必要がある。土地、労働、環境コストの違いを利用して構築された過去の収益モデルは、今でも日本で通用するのか? また、これを機会に経済・貿易の側面で、日本と台湾はより緊密な相互補完関係を築くことができるのだろうか? これが重要なポイントになる。
台湾と韓国で半導体クラスターが発展したのは、業界の特性に応じた設計、製造、パッケージング、テストなど、すべての段階での生産効率と経済効率がバランスした結果であり、政府が助成をしたからといって成功するものではない。現在、各国の政府が出資に積極的であるが、最適な分業体制構築やシステムの最適化、また、地理的リスクの分散化や新型コロナウイルス流行のリスクを回避できるかどうかなど、乗り越えるべきさまざまな課題がある。

© Shutterstock /TPG Image
TSMCにとって、アメリカ、日本のどちらに工場を作ったとしても、市場の連動性を考えることが重要である。また、日本政府や産業界にとっては、いかにして半導体産業におけるポジションを拡大し、東アジアの半導体ハブを目指して、初期投資を効率的に回収していくかを考えることが重要である。
今回の半導体産業における台湾と日本の協力関係は、政府と企業の西進・南下型の開発モデルが時代遅れになっていないか。また、土地・労働・環境コストの違いを利用して過去に構築した収益モデルが今でも日本で通用するのか、ということを双方が考えるきっかけになっている。
鮭の母川回帰ともいえる今回の「北上遠征」の舞台は、労働条件、環境保護、政府の規定、市場の成熟度の全てが整い進んでいる日本となった。日台の経済貿易関係は、この機会をきっかけに、どのようにして緊密な相互補完関係を築きあげ、より広い産業普及効果、労働者の賃金と福利厚生の向上を実現できるだろうか。
台湾と九州の「新北方エリア」確立が現実化したとき、半導体産業は単に演算能力や装置だけでなく、二国間の経済貿易仕様のアップグレードモデルにもなってくる。 これは、台湾と日本の産官学が回答を模索しなければならない一枚の「試験用紙」である。
原文作者:王克殷
原文責任編集者:丁肇九
原文校閲者:翁世航
翻訳者:TNL JP編集者
校閱者:TNL JP編集者