2022-01-05 テクノロジー

TSMCの熊本工場設立で「くまモン」と台湾は手を携え一つの家族になれるか?

© AP/TPG Image

注目ポイント

台湾と日本は、これまでの西進・南下型のビジネス開発モデルが、時代遅れになっていないかを考え直す必要がある。土地、労働、環境コストの違いを利用して構築された過去の収益モデルは、今でも日本で通用するのか? また、これを機会に経済・貿易の側面で、日本と台湾はより緊密な相互補完関係を築くことができるのだろうか? これが重要なポイントになる。

 

 


日本政府は2021年度、半導体サプライヤー支援のために、6000億円の予算を計上することを決定した。そのうち最大4000億円が、TSMCの熊本新工場(菊陽町)建設の助成金として割り当てられる。


日本政府が外資系企業に助成金を出すのは珍しく、保護主義であった日本の産業政策の考え方が大きく変わったことを示すだけでなく、日本の産業界の「第2の明治維新」ともいえる。さらにいえば、過去から続く「ローカルファースト」の考え方が、新型コロナウイルスの流行によって「解き放たれた」ことを意味するものでもある。

 

これは、日本政府と台湾企業の二者間のみの協力関係にとどまらず、ハイテク産業、企業文化、技術研究開発、人材育成、生産システムといった、高度に複合化された統合関係が促進される、これまでにない機会であることを象徴している。
 

TSMCの熊本工場設立は、「半導体産業」だけの勝利ではない。 TSMCは最大の勝者に見えるが、この“日本料理”を堪能できるのは、TSMCの自社工場やその上流・下流に関わる企業だけではない。日本や台湾のデジタル産業、そしてそれらに関連する九州の企業全般にとって、今後少なくとも10年間は成長できる基盤が整ったということである。

 

半導体の世界市場は、2020年に約4400億米ドルとなり、そのほとんどが工作機械、自動車、スマートフォン、データセンター/ソリッドステートドライブ(SSD)の分野に集中している。経済産業省によると、世界の半導体市場は2030年には約1兆ドルにまで拡大すると予想されており、TSMCの熊本工場ではソニーグループとの合弁で22~28nm(ナノメートル)のチップを生産する。

 

「生産」そのものは、TSMCの日本事業の第一歩に過ぎず、技術と人材を同時に向上させるというのが、全体的な青写真である。熊本に加え、TSMCの研究開発センター(茨城県つくば市)にも経済産業省から190億円の助成金が交付され、日本企業20社が参加し、第3世代半導体をターゲットにした、3D半導体パッケージング技術の共同研究を行う予定だ。

 

TSMCはいかに日本の生産体制と連携していくか?

 

九州は台湾とほぼ同じ面積を有しており、2020年のウェハ生産量は日本全体の43.1%に達している。1980年代には、世界のウェハ生産量の約10%を占め、九州は「シリコンアイランド」とも呼ばれていた。今もなお日本のICチップ、自動車、ロボット産業にとって非常に重要な存在である。

⎯  続きを読む  ⎯

あわせて読みたい