2022-04-11 ライフ

【こころの健康について考える】(中) 高校教科書に精神疾患の記述が40年ぶりに復活

心の病には偏見や差別もある。また、心の病は14歳までに大半が発症する。若年層の死因の一位である自殺の背景には精神疾患があるとされ、正しい知識にもとづいた早期発見、診断の必要性を若者自身や家族など周囲の人々が学ぶ必要性が増している。

そうした中、この4月から使われる高校の保健体育の教科書に精神疾患の記述が40年ぶりに復活した。これは2018年の学習指導要領の見直しによるもの。

「若年層の死亡率が増加している理由として自殺者が増えていることがある。背景にはうつ病などの精神疾患がある」と見直しの理由について、保健体育の教科書の学習指導要領を担当するスポーツ庁政策課学校体育室は説明する。

学習指導要領では「うつ病、統合失調症、不安症、摂食障害などを適宜取り上げ、誰もが罹患(りかん)しうること、若年で発症する疾患が多いこと、適切な対処により回復し生活の質の向上が可能であることなどを理解できるようにする」とある。


 

また「自殺の背景にはうつ病をはじめとする精神疾患が存在することもあることを理解し、できるだけ早期に専門家に援助を求めることが有効であることにも触れるようにする」としており、偏見や差別の対象でないことの理解も促すようにとしている。

かつて精神疾患は高校で教えられていた。例えば1970年の学習指導要領によると、おもな精神障害、心身相関、健康な精神生活ということが授業で扱われていた。

だが、78年の学習指導要領からは精神疾患のことが消え、82年からは教科書に載らなくなった。代わりに「心の健康」というより広い扱い方になっていた。

2021年の自殺者数は2万1,007人で、そのうち小中高生は473人(厚生労働省)。理由としては精神疾患、学業不振、親子関係の不和が多かった。

2019年の「自殺対策白書」によると、2009年から2019年の累計で、男子高校生の自殺の原因・動機としてはうつ病が8.7%を占め、女子高校生ではうつ病が18.3%、その他の精神疾患が12.1%になると明らかになっている。

そういう背景があって精神疾患の記述が復活した高校の教科書。例えば、大修館書店の「現代高等保健体育」は全129ページの保健編のうち8ページを精神疾患について割いている。精神疾患の特徴、予防、回復に加え、「ストレスや不安に対処しよう」、「うつ病からの回復をたどってみよう」といった項目が並んでいる。

また、第一学習社の「高等学校保健体育」では、保健編の全122ページのうち10ページを精神疾患に割いている。予防の大切さや回復過程などの記述に加え、「どんなときにストレスを感じるだろう?」として、予防策を考えさせるような内容になっている。

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