2022-04-07 ライフ

【こころの健康について考える】(上) 「繊細さん」ってご存知ですか?

「繊細さん」という言葉をご存知だろうか?

感受性が強くて傷つきやすい人を指して使われている言葉だという。そして、『「繊細さん」の本』(飛鳥新社)、『「繊細さん」の幸せリスト』(ダイヤモンド社)、『雨でも晴れでも「繊細さん」』(幻冬舎)といった武田友紀(たけだ・ゆき)氏の著作などが売れている。

「繊細さん」と同じく、感受性の強い人のことを指すが、特にその上位20%を指すHSP(Highly Sensitive Person)という用語もある。
「繊細さん」もHSPも病気ではない、と精神科医はいう。


 

だが、NPO法人・東京メンタルヘルス・スクエアの常務理事でカウンセリングセンター長の新行内勝善(しんぎょううち・かつよし)氏は語る。「最近目立つのは、若い世代でインターネットの影響が強いということ。ネットで調べると何でも出てくるので、いろいろと調べて、自分はうつだとか発達障害だとか思い込み、自分で悩んでしまうことだ」

ツイッター、出会い系アプリといったSNS(ネット交流サービス)の中の人間関係に悩んでいる人も多く、中には犯罪まがいのものも、と新行内氏。
とかくストレスフルな世の中である。

新行内氏は、ストレスの現れ方にもいろいろある、という。溜まったストレスが虐待、DV(家庭内暴力)、いじめ、ハラスメントといった他人への暴力の形で出てくる一方で、「もとは同じストレスだとしても、自分に向き、自分の中に閉じ込めてしまうと、特に若い人だが、リストカットといった自傷行為や薬の過剰摂取につながってしまう」と語る。

新行内氏によれば、薬の過剰摂取を続けると耐性がついてしまい、さらには依存性があるので、止められなくなってしまい、肝臓にダメージを与えてしまう。

厚生労働省によると、20才未満の精神疾患を有する総患者数は2017年に27.6万人で、1999年の11.7万人から急増している。また、内閣府の調査では、若年層(15~34才)のひきこもり人数は推定で69.6万人とされる。

東京メンタルヘルス・スクエアではLINEをはじめとしたSNSなどで相談を受けている。2021年はSNSを通じた相談件数は3万4,899件にのぼり、前年比44%増となった。そのうち10、20代の相談が約6割を占めるという。

東京メンタルヘルス・スクエアのSNS相談は女性が約8割だ。「それには日本の文化が深く影響しているのではないか」と新行内氏はみている。

「男性は男らしさが求められ、弱音を吐いてはいけないと思い、何でも自分一人でやり切ろうとする傾向がある」

新型コロナ感染拡大の影響では、仕事や雇用面でよりつらい状況になり、損をしている、あるいは大変になったのは女性のほうではないか、と新行内氏はいう。

東京・中野のあしかりクリニック院長で東京精神神経科診療所協会の会長を務める芦刈伊世子(あしかり・いよこ)氏は「コロナ禍で、専業主婦で閉塞感を覚えて憂鬱になり、(ストレスで)のどが詰まった感じを訴える人が確実に増えた」と語る。

それは生活環境の変化によるものだという。今まで仕事で外にいた夫が家にいるようになり、さらに子どもが休校で、自由な時間がとりにくくなりイライラが募った、と芦刈氏。同氏は「2020年4、5月くらいには赤ん坊への虐待が多かった」と続けた。

東京・上野の浜田クリニック院長の梶原徹(かじわら・とおる)氏は「女性でパートに出ていた人が、コロナの影響で店に客が来なくなったりして失業、パートという立場なので失業保険も受け取れず、追い込まれてしまっている」という。

そういう背景があり、女性の自殺が増加しているのでは、と梶原氏はみている。2021年の男性の自殺者は1万3,939人で12年連続の減少。これに対して、女性の自殺者は7,068人で、2020年に前年比15.4%と急増してから、高止まりの水準となっている。

 

自殺問題は依然深刻だ。だが、より一般的な意味でのコロナ影響は少しずつ収まりつつあるのではないかと芦刈氏はいう。「だんだんと、どうやったら自分の機嫌を良くすることが出来るのかを見つけ出している、あるいは学習しているようだ」。コロナの“正体”について学習が進み、対処の仕方を覚えつつあるのではないか、と芦刈氏。

現在の一番の問題は60代、70代の人たちだと芦刈氏は指摘する。「この2年間(のコロナ拡大の影響)で大きな打撃を受けており、“激うつ”みたいな感じ。若い人たちと違って、解決の手段があまりない」と芦刈氏は心配を募らせている。 (つづく)

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