台湾によるウクライナへの人道支援をめぐり、中国が「他国の困難な状況に便乗している」などとして批判していることについて、台湾の呉釗燮(ごしょうしょう=ジョセフ・ウー)外相は、「真心の支援で、政治利用ではない」として、北京政府の〝言いがかり〟をぴしゃりとはねつけた
ロシアによる全面侵攻を受けているウクライナの抗戦姿勢は、台湾で広く共感を呼んでおり、中国による軍事的脅威との類似を指摘する向きも多い。台湾はまた、欧米主導の対ロシア制裁に加わっていることから、中国政府がこの問題を自らの目的のために利用しようとしていると主張したのだ。
ロイター通信によると、中国国務院台湾事務弁公室の朱鳳蓮報道官は、「(台湾の与党)民主進歩党は、ウクライナ問題に便乗して自らの存在意義を確認しようとしている」とし、「政治的な操作によって対立をあおり、敵意を作り出そうとする彼らの試みは成功しない」と述べた。
中国はロシアのウクライナ侵攻を非難していない。
これに対し呉外相は先週末、ウクライナや欧州各国の外交官が参加した会合で講演し、「中国側は何をしても台湾を批判する」と前置きし、ある米国人外交官が同氏に言った、「中国政府がもし気に食わないとすると、あなた方は正しいことをしている証拠だ」との逸話を紹介し、参加者から拍手を浴びた。
「台湾に暮らしている人にとって、ウクライナ人やウクライナ政府に対してどっと寄せられる支援は自発的なものであり、自然なことでもあり、純粋なものだ」と指摘。「それは私たちの心からもので、政治的意図のあるものではない」と強調した。
台湾はウクライナの避難民を受け入れているポーランド、スロバキア、チェコ、ハンガリー、リトアニア、エストニア、ラトビアなどに合計2000万ドル(約24億5000万円)を送り、そのほとんどが民間からの寄付によるものだ。今後、さらに1200万ドル(約14億7000万円)の追加支援を計画している。
一方、中国が自国の赤十字を通じてウクライナへの人道支援として寄付したのは、1500万元(約2億9000万)だった(ロイター通信)。
台湾とウクライナとの間に外交関係はないが、呉氏はウクライナ政府から謝意を受けたとし、「将来は互いに有意義な関係を構築したいが、現時点ではいかにウクライナの人たちを救えるかに集中したい」と述べた。
台湾による寛大な人道支援は、日本では特によく知られている。壊滅的な津波被害により死者・行方不明者1万8000人以上を出した2011年の東日本大震災では、人口2360万人の台湾からの義援金は約250億円にも達した。これは最大のドナー国・米国からの義援金に匹敵するものだった。