2021-12-24 経済

中国の「千人計画」参加の米ハーバード大教授 巨額の報酬隠し当局への虚偽申告で有罪評決

© Reuters /TPG Images

米・ボストンの連邦地裁の陪審は今週、中国政府の海外人材支援プログラム「千人計画」に参加しながら、収入を米当局に報告しなかったとして、虚偽申告などの罪に問われたハーバード大教授チャールズ・リーバー被告(62)に、有罪評決を下した。中国側から給料や研究費など莫大な資金を得ていたとされる今回の事件だが、実は氷山の一角で、米国ではすでの多くの科学者が訴追されている。

 

裁判記録によると、リーバー被告は2012年から少なくとも3年間、最大で月給5万ドル(約570万円)と生活費年間15万ドル(約1700万円)に加え、中国に研究所を開設するためという名目で150万ドル(約1億7000万円)を受け取っていた。その見返りとして同被告は中国・湖北省の武漢理工大の名義で論文を発表していたとされる。

 

リーバー被告はナノテクノロジー分野の世界的権威で、米国防総省や米国立衛生研究所などからも研究費を受け取っていた。そのため、外国からの資金提供については米政府に申告する義務があったが、千人計画への参加を隠し、米当局にも関与を否定。米政府への虚偽説明や虚偽の所得申告を行った罪などに問われていた。

 

千人計画は2008年末、中国・国務院と共産党中央組織部が立ち上げ、極秘裏に始まった。海外の理工系トップクラスの人材を破格の待遇で勧誘し、中国の軍事や経済の発展に寄与させることが目的だとされる。

 

中国政府はすでに同計画の存在を認め、17年までに「千人」どころか7000人以上の科学者を米国など世界各国から参加させているという。

 

そんな動きに米国では、国内で活動する研究者への支援を通じ、中国が知的財産の獲得を図っているとして近年危機感が高まっていた。そのため、連邦議会上院の国土安全保障政府問題委員会は調査を行い、19年11月に報告書を発表した。

 

それによると、中国当局は参加している科学者に盗用してでも高度な技術を入手するよう求め、千人計画への関与を一切口外しないよう命じている。

 

また、米連邦捜査局(FBI)も独自の捜査を通じ、リーバー被告の事件以外にも米国内で「千人計画」関係者による犯罪事例を公表している。

 

例えばオクラホマ州で石油会社に勤務していた永住権を持つ中国人科学者ホンジン・タオ氏は、同社の10億ドル(約1144億円)にも値する企業秘密の高度技術を盗み出した容疑で逮捕・起訴され、昨年有罪が確定。現在、服役中だ。

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