世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は22日、先進国で進む新型コロナウイルスの包括的追加接種は「コロナ禍を長引かせるだけ」だと批判し、「どの国もブースター接種だけでこのパンデミックから抜け出すことはできない」と警告した。
テドロス氏は発展途上国がいまだワクチン確保に奮闘する中、追加接種は“免疫の不均衡”につながり、ウイルスがさらに拡大して新たな変異種を生むことで、コロナ禍の終息を遅らせることになると訴えたのだ。
これはオミクロン株が急拡大する中、米国が16歳以上の国民全員に3回目の接種を進めることを決めた措置や、パンデミックでいち早くワクチン接種を開始したイスラエルが今週、60歳以上を対象に4回目の追加接種実施を発表したことなどを受け、途上国との免疫格差の広がりを懸念したWHOの発言だと米CNBCニュースは伝えた。
米国で新型コロナ対策を取り仕切る米疾病予防管理センター(CDC)のワレンスキー所長は同日、米CNNとのインタビューで、年末年始のホリデーシーズンに「人たちが集まれるようにしたい」とした上で、「そのためには、まずワクチン接種を済ませること。できればブースター接種もし、集まった誰もがワクチンを打ち、追加接種も終わらせていることを確認してもらいたい」と語った。
これに対してテドロス氏は今週初め、オミクロン株について「ワクチン接種済の人や新型コロナから回復した人が感染する可能性も高い」として警戒を呼びかけ、年末年始のイベントで人が集まり、感染がさらに拡大することを危惧。「いま祝って、あとで悲しむよりも、いまは中止して後で祝った方が良い」と忠告した。
一方、多くの研究者はオミクロン株の出現が、世界のワクチン不均衡と密接な関係があると指摘する。
同株は、ワクチン接種完了率が26%と低い南アフリカで、HIV患者から初めて検出された。コロナウイルスは特に免疫力の弱い人の体内で変異することが多いという。そのような体内ではウイルスが長く生き続けることができ、さらに生存する方法として変異を始めるからだと専門家は説明している。
そのため、ワクチン接種が進まない途上国で新たな変異種が、今後も出てくる可能性は高いとみられる。WHOによると、今年の年末までに国民の少なくとも40%がワクチン接種を終えるのは、同機関加盟国の半分のみ。裕福な国だけにワクチンが集中する現状を「世界のワクチン供給の不均衡によるものだ」と指摘した。WHO健康危機管理プログラムの責任者マイケル・ライアン氏は「2021年の最もおぞましい不公正だ」と嘆いた。