注目ポイント
日本の経済産業省は、日本国内の半導体産業の強化のため「半導体産業基盤緊急強化パッケージ」を発表した。日本政府は、TSMC(台湾積体電路製造)および及びソニーに、約4,000億円を補助するとし、初期投資額の8,000億円の半分に達する見込み。今後は、3ステップで計画を実行する予定だ。
世界各国での半導体サプライチェーンを構築するというトレンドに対して、台湾経済研究院責任者の劉佩真氏は「半導体不足の現況を鑑みると、最先端技術の応用や現地化によるサプライチェーン強化がいかに重要かわかる。さらに、昨今の米中摩擦においても、半導体が産業戦略としての地位を確立した」と述べた。

劉佩真氏によると「今回の台日提携は強いメッセージ性を持っている。台湾の半導体産業で自給率が低い分野、特に電子ガス、高純度化学試薬、フォトレジスト、 研摩パッドなど、これらの原材料はまさに日本の強みでもある。台日提携を結ぶことで、台湾の競争力に悪影響を与えることなく、お互いの産業をバランスさせ、ウインウイン(Win-Win)の関係を構築できる」という。
日台合弁で設立する半導体ファウンドリ工場は10年前の技術
現在、TSMCが主に生産している製品は、5〜7ナノメートルの高度製造プロセスを採用している。5ナノメートルプロセスは、主にiPhoneやMacBookに搭載されているアップルチップに使用されており、最新のM1やA15 Bionicも5ナノメートルプロセスを採用している。一方、7ナノメートルプロセスは、PlayStation 5やXbox Series Xに搭載されていることで知られている。
TSMCは、2ナノメートル半導体を2025年に量産し、3ナノメートル半導体は2022年第2四半期に量産すると表明している。2〜3ナノメートルプロセスに対し、22〜28ナノメートルプロセスは、10年前にパソコンに使用された技術だ。では、なぜ日本政府は、数千億円をTSMCとソニーに提供し、「時代遅れ」のファウンドリ工場を建設させようとするのか。
その理由は、高度先端プロセス(2〜3ナノメートル)の建設コストを負担できる会社は数少ないからである。難易度の高い技術のため、その投資の敷居も高い。米国を例にとると、半導体の主導権を取り戻すため、政府はインテル(intel)に数百億ドルを助成している。しかし、世間では批判的な声があり、工場建設のための努力が無駄になるのではないか。また長期的な損失を引き起こすのではないかなど、心配の声も相次いでいる。

ソーニーセミコンダクタソリューションズ代表取締役の清水照士氏は今年6月、TSMCに古いプロセスの半導体の増産を依頼するのであれば、自社の生産に頼るほうがよいとした上で、半導体の不足が深刻な状況下においては、国の補助が得られる方法なども採用し、コスト競争力を生み出す必要があると語っている。