2021-11-30 経済

日本半導体産業復興の希望!TSMCとソニーの協業工場建設

注目ポイント

日本の経済産業省は、日本国内の半導体産業の強化のため「半導体産業基盤緊急強化パッケージ」を発表した。日本政府は、TSMC(台湾積体電路製造)および及びソニーに、約4,000億円を補助するとし、初期投資額の8,000億円の半分に達する見込み。今後は、3ステップで計画を実行する予定だ。

2021年、世界のテクノロジー産業は大きな影響を受けた。コロナ禍の下で、ここ10数年で形成してきた国際分業体制にも大きな影響を及ぼしている。代替エネルギー、リモート技術などの急速な発展もその一因となっている。それにより、今後ますます半導体需要の高まりが見込まれ、それにともない半導体不足が常態化し、世界各国が半導体工場を建設せざるを得ない状況になっている。かつて半導体大国と呼ばれた日本もその一員である。


日本政府から4,000億円の補助受け、熊本に半導体ファウンドリ工場

台湾の「護国神山(=国を守る神の山の意味)」ともいわれるTSMCは、ウェハ製造の世界的リーダーである。市場調査分析会社であるTrendForceの調査によると、今年第2四半期の時点で、TSMCは52.9%の市場シェアを持つ。つまり、世界の半分以上のハイテク製品、例えば自動車、スマホ、パソコン、ゲーム機など、あらゆる情報通信製品は、TSMCが生産した半導体チップを使用していることになる。

 

近年、新型コロナの感染拡大にともない、世界各国で外出制限などが発令される中で、高度に専門化されたグローバルサプライチェーンの多くが、原材料供給の遅延に直面し、さらには供給停止になることすらあった。中でも半導体チップの供給不足は特に深刻化しており、電気や家電製品産業、さらには自動車産業にも大きな影響を与えた。

 

「半導体不足」の拡大は、国家安全保障上の問題にも関連する。「Nikkei Asia」の報道によると、トヨタ自動車の9月の生産台数が40%の大幅減となったことに、日本政府側も大きな関心を寄せており、今後、自動車の安定的な供給を図るため、また5G無線技術の発展を加速させるために、半導体産業への支援を優先する方向に舵を切ったとしている。そんななか、TSMCが最初に資金援助を受けるメーカーとなった。

経済安全保障担当大臣の小林鷹之氏はインタビューで「TSMCの日本進出は、半導体産業復興の最初の一歩に過ぎない。今後は中国や米国に匹敵する長期的な支援措置を講じていくべきだ。そうでなければ、日本の半導体産業の復興に希望はない」と強調した。

 

現在、日本の産業界で最も重要なのは、「サプライチェーン寸断」の渦に巻き込まれないようにすることである。「日本経済新聞中国版」は、日本のソニーは自給自足できるようにTSMCと提携して、回路線幅が22〜28ナノメートルの「汎用ロジックIC」とも呼ばれる半導体の工場を熊本県菊池郡菊陽町に設立し、その設備投資額が約8,000億円(約69.6億米ドル)になる見込みと報じている。

 

注目すべきなのは、この建設計画は日本政府からの支援を受けていること。日本政府は4,000億円(総投資額の約半分を占める)の補助金を出し、TSMCとソニーの工場建設を援助する方針である。完工後、主に自動車システムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)に使用される半導体チップを生産する予定で、状況によって日本のメーカーに優先的に供給される見込みである。

 

TSMCの最高経営責任者(CEO)魏哲家氏は「業界最大手で、TSMCの長年の顧客であるソニーの支持を得られることはとてもうれしく思う。日本の新しい工場を通じて、市場の需要に応えていく」と強調した。TSMCは、2022年から建設を始め、2024年末には生産を始めることを目指している。工場開設により、約1,500人の先端技術に精通した人材の雇用を創出し、月間生産能力は4万5,000枚(300mmウェハ)を目標とする。また、ソニーは20%未満での株式を取得する予定。

 

半導体産業をめぐる国家戦略、日本にとっての重要性

TSMCは世界中に顧客を持ち、有名なアップル社のほか、ファーウェイ(HUAWEI)、クアルコム(Qualcomm)、AMD、信越化学工業、および今回の提携先のソニーなどがある。

 

「Nikkei Asian Review」の報道では、今回TSMCが日本に進出する目的の一つは、ソニーを含む日本の重要な顧客にサービスを提供することとしている。

 

実は、日本国内では2019年からTSMCと提携するといううわさが流れていた。IEEEが出版する「IEEE Spectrum」の報道によると、16年間大手電気メーカーの東芝に勤務し、先端システム技術研究組合(RaaS)理事長を務める黒田忠広氏は「TSMCは、日本が欲しがる7ナノメートルのプロセス技術を持っている。一方、日本の研究開発においては、物理、化学および原材料などの基礎研究はトップレベルに達している。ムーアの法則(半導体性能の原則)に則った新型装置の開発に向け、相互の知識を融合させ、連携体制を構築することが可能となる」と語った。

 

黒田氏はさらに、「TSMCの半導体技術により、日本が新たな顧客を開拓することができる。日立、パナソニックおよび凸版印刷など、多くの日本企業にとってより大きなメリットが期待できる」と明言した。

 

近年、日本は欧米諸国が半導体に多額の投資を行っていることにプレッシャーを感じていた。黒田氏は「昨年12月に、欧州連合(EU)22か国が共同で、『設備、技術、設計および先端製造などのバリューチェーン投資』を含めた『欧州の半導体能力』の強化を発表している。また、米国商務長官のジーナ・レイモンド(Gina Raimondo)氏は、半導体の研究及び生産に対して520億ドルを追加投資すると提言し、米国国内でさらに10か所のファウンドリ(工場)を設立する見込だとしている。こういうニュースを見て、日本は成長しないといけない」と提言した。

 

世界各国での半導体サプライチェーンを構築するというトレンドに対して、台湾経済研究院責任者の劉佩真氏は「半導体不足の現況を鑑みると、最先端技術の応用や現地化によるサプライチェーン強化がいかに重要かわかる。さらに、昨今の米中摩擦においても、半導体が産業戦略としての地位を確立した」と述べた。

劉佩真氏によると「今回の台日提携は強いメッセージ性を持っている。台湾の半導体産業で自給率が低い分野、特に電子ガス、高純度化学試薬、フォトレジスト、 研摩パッドなど、これらの原材料はまさに日本の強みでもある。台日提携を結ぶことで、台湾の競争力に悪影響を与えることなく、お互いの産業をバランスさせ、ウインウイン(Win-Win)の関係を構築できる」という。
 

日台合弁で設立する半導体ファウンドリ工場は10年前の技術

現在、TSMCが主に生産している製品は、5〜7ナノメートルの高度製造プロセスを採用している。5ナノメートルプロセスは、主にiPhoneやMacBookに搭載されているアップルチップに使用されており、最新のM1やA15 Bionicも5ナノメートルプロセスを採用している。一方、7ナノメートルプロセスは、PlayStation 5やXbox Series Xに搭載されていることで知られている。

 

TSMCは、2ナノメートル半導体を2025年に量産し、3ナノメートル半導体は2022年第2四半期に量産すると表明している。2〜3ナノメートルプロセスに対し、22〜28ナノメートルプロセスは、10年前にパソコンに使用された技術だ。では、なぜ日本政府は、数千億円をTSMCとソニーに提供し、「時代遅れ」のファウンドリ工場を建設させようとするのか。

 

その理由は、高度先端プロセス(2〜3ナノメートル)の建設コストを負担できる会社は数少ないからである。難易度の高い技術のため、その投資の敷居も高い。米国を例にとると、半導体の主導権を取り戻すため、政府はインテル(intel)に数百億ドルを助成している。しかし、世間では批判的な声があり、工場建設のための努力が無駄になるのではないか。また長期的な損失を引き起こすのではないかなど、心配の声も相次いでいる。

ソーニーセミコンダクタソリューションズ代表取締役の清水照士氏は今年6月、TSMCに古いプロセスの半導体の増産を依頼するのであれば、自社の生産に頼るほうがよいとした上で、半導体の不足が深刻な状況下においては、国の補助が得られる方法なども採用し、コスト競争力を生み出す必要があると語っている。

 

これらに関し、台湾経済研究院の劉佩真氏は、インテルの場合、TSMCの技術に追いつくのは難しく、ファウンドリビジネスモデルの構築もTSMCとは比較にならない。さらに同氏は「TSMCと顧客との間で競合の関係はない。それは米国インテルや韓国サムスンに比べ、競合における非常に重要な要素だ」と語った。

 

また、TSMCの財務諸表を見ると、工場、機器及び技術研究開発に対する投資額は、1,000億ドルに達し、昨年の日本の年間国内総生産(GDP)の約1.8%に相当する(2020年日本の年間国内総生産は、5.3兆ドル=608.4兆円)。

 

TSMCは世界トップシェアメーカーであるが、競合会社がないというわけではない。韓国のサムスンは徐々にTSMCを追従してくるであろう。TSMC創業者の張忠謀氏は「産業の環境が似ており、エンジニアの質も匹敵する。サムスンはTSMCの強敵だ」と述べた。
 

現在、サムスンは半導体市場で17.3%のシェアを持ち、世界2位の半導体ファウンドリでもあるが、TSMCの52.9%とはまだかなりの差がある。しかし、張忠謀氏は「半導体ファウンドリのゲーム理論において、TSMCとサムスンは1対1の局面にある。気を抜かないことが重要だ」とTSMCの従業員に呼び掛けていると語る。

 

また同氏は「半導体ウェハの製造は全世界中の国民の生活、経済及び国家安全につながる産業であり、台湾が世界競争での大きなアドバンテージを有している。そして今後も重要な役割を担うことになる。台湾政府もこのことを重視して考えるべきである」と警鐘を鳴らした。

 

原文作者:莊貿捷
原文責任編集者: 翁世航
原文校閲者: 翁世航
翻訳者: TNL JP編集者
校閱者: TNL JP編集者